今年6月、台湾の「裸で入れる湯」を詳細にレポートしたコミックエッセイ『台湾はだか湯めぐり 北部篇』(中央公論新社)を刊行した台湾出身の漫画家・捲猫(マキネコ)さん。制作秘話について語っていただいた前篇に続き、中篇では台湾の温泉文化についてお話を伺いました。
台湾の入浴スタイルはかなり自由
――台湾と日本ではだか湯めぐりをしている捲猫さん。温泉文化の違いは感じますか?
日本人は裸で入浴することに慣れているというのが台湾との大きな違いですが、もうひとつ感じるのは、台湾の入浴スタイルはかなり自由ということですね。本にも書きましたが、台湾では浴室で果物を切って食べている人などもいて、初めて見たときは台湾人の私でも衝撃を受けました。
――台湾では浴室での飲食はOKなんですか!?
もちろん禁止です(笑)。館内には禁止の貼り紙もあるのに、持ち込んでも注意されるでもなく、暗黙の了解になっています。その分、においがキツイ食べ物は持ち込まないとか、湯船から一定の距離を空けた場所で食べるとか、堂々とルールを破りながらも、ちょっとした気遣いがあるのも憎めないところです。
――台湾の人は温泉でどんな過ごし方をされるのでしょうか?
台湾人は長湯好きで、浴室内で2~3時間過ごすのが普通なんです。大浴場も長く過ごせるような造りになっていて、椅子だけでなくテーブルや寝椅子が置いてあるところも多く、浴室内でおしゃべりをしたり、果物を食べたり、温泉に浸かることだけが目的ではない、幅広い楽しみ方をしているように感じます。あと、温泉回数券のトレードも醍醐味ですね。
――温泉回数券について詳しく教えてください。
温泉回数券は、基本的に購入した施設でのみ使うことができる回数券で、1セット10枚から販売しています。常連になるとお得な30枚セットを買って、ほかの温泉の回数券を持っている人とトレードをして、湯めぐりを楽しむのが台湾流です。
私の本を翻訳してくれた三浦裕子さんが、本で紹介している烏来の「小川源温泉」に行ったときも、脱衣所でおばあちゃんに話しかけられて、「お嬢さん、一緒に回数券を買わない?」と誘われたそうです。温泉回数券のトレードは、それぐらい台湾の温泉好きの間では浸透していますね。もし温泉回数券を買うときは、温泉がオフシーズンになる夏に買うと安くておすすめです。
2024.09.04(水)
文=田辺千菊(Choki!)
写真=石川啓次