この記事の連載
◆『遠い日の陽』横谷加奈子/講談社
写真売買から始まる、令和的奇譚……。「モーニング月例賞2023年9月期」入選受賞作(※単行本未発売。コミックDAYSで配信中)
「横谷さんの作品に漂う淋しさと孤独は、甘さを伴っている。心細い人間が生きている世界は道や建物、景色さえ淋しく、また愛しいものであると伝わってくる。そんな中独特な設定で描かれる他者とのつながりには、めでたしではない本当の救いがある気がする。そして結局は、いつまでも横谷作品の淋しさの中にいたくなってしまうのだ」(鶴谷さん)
「フリマアプリで自分の幼少期の写真を売る『チヒロくん』と、なんとなく惹かれるものがあり、それを買った男子高校生の話。テーマとその昇華のさせ方に、新人の方とは思えないセンスを感じました」(佐久間さん)
◆『美しいもの』鳥井泳/COMIC MeDu
閉館を間近にした避暑地の美術館。ある日、遠方からやってきた少年が1枚の絵画をじっと見つめていて……。新鋭が贈る、記憶と邂逅の読み切り(単行本未発売)
「単純に1本の作品として素晴らしかったし、驚いた。美しいもの、それを感じること。そのかけがえなさ。誰にも奪えない感受性。今でもたまに読み返すし、早く次作が読みたい作家さんです」
◆『走り出す花びら』甘井最鹿/祥伝社
単身やってきた海の向こう、日本。何もかもが手探りのこの場所で、「新しい私」は見つかるのか……。(単行本未発売)
「フィール・ヤングに掲載されたデビュー作『走り出す花びら』が絵、物語ともにとんでもないクオリティでした。早く新作が読みたいです」
◆『オッドスピン』菅野カラン/講談社
双子の姉妹はなぜ「なんとなく」地面師になったのか。土地の所有者に成りすまし、金を騙し取る詐欺師、地面師に目をつけた姉妹が繰り広げるクライムサスペンス。
「主人公は地面師(不動産の詐欺師)の姉妹。近場へ日帰り旅行にいくぐらいのノリで巨額の詐欺を淡々と進めていくふたりの様子が、作者独特のテンポで描かれていきます。不穏と平穏が同居しているような、なんともミステリアスな空気に満ちていて、姉妹に相対するキャラも得体のしれない曲者揃い。今後どう展開していくのか、すごく注目しています」
2024.09.28(土)
文=大嶋律子(Giraffe)