この記事の連載

◆『それでも天使のままで』小骨トモ/双葉社

 学校に居場所がない小林くんが映画館で目覚めた「リカ先輩の夢をみる」ほか、「それでも天使のままで」「あの嫌いなバンドはネットのおもちゃ」「先生のクモのイト」の4つの初恋を描いた物語。

「単行本2作目なので青田買いといっていいのか微妙ですが、こちらもめっちゃよかったです。生々しくて醜いけど愛おしい作品を描ける貴重なマンガ家さんです。ちなみにマガジンハウスSHUROで連載されている、かわじろうさんも青田買いしたい作家さんです」

推薦者

ジュンク堂書店池袋本店コミック担当
八木 泉(やぎ・いずみ)さん

丸善ジュンク堂書店でコミックジャンルアドバイザーチーフを務める。コミック担当歴は20年以上というマンガの専門家。

◆『mothers』草原うみ/トゥーヴァージンズ

 喪失を抱えるふたりの母の心の葛藤を描いた「mothers」ほか、珠玉の12編を収録。

「心の奥底に澱を抱えたふたりの母親が、ある出会いをきっかけに心を解かしてゆく表題作をはじめ、遠い日に傷ついた人の心を優しく揺らした行為が、数年の時を経て温かな時間を連れてくる瞬間を描いた『ティラミスのパフェ』など、人間関係の複雑さをやわらかな視点で捉えた12篇がどれも良かったので。初連載の『やがて、ひとつの音になれ』も楽しく読んでいます」

推薦者

ライター・編集者
山脇麻生(やまわき・まお)さん

マンガ誌編集を経てフリーに。各紙誌でコミック評及びコミック関連記事などを執筆。京都精華大学新世代マンガコース非常勤講師も務める。現在、11月刊行の黄表紙関連本を執筆中。

◆『夜明けの唄』ユノイチカ/シュークリーム

 人間のために命を削りながら正体不明の化け物と闘う運命にある少年エルヴァと、彼を救うべく奮闘するアルトノウルとの絆を描いたファンタジーBLマンガ。

「あー、不思議の国の話かな、と思いきや、次々と明かされる秘密にのめり込みました。エルヴァの美しさやキュンとするシチュエーション、登場人物の苦しみが波のように襲ってきて、脳みそグルグルです。

 久々にドハマりしました。GW中に大人買いして、何十回読み直したか……。BLというよりはバディものに近く、BL慣れしていない人にも受け入れられそう。とにかく壮大な設定、そして共感しかない人権問題の扱いがすごくいい。商業デビュー1作目でこのクオリティ! この先が楽しみです」

推薦者

少女マンガ研究家
和久井香菜子(わくい・かなこ)さん

ライター、少女マンガ研究家、TLノベル編集。少女マンガ研究で『マツコの知らない世界』などのメディア出演も。京都芸術大学在学中。

次の話を読む「夜ふかしマンガ大賞2024」第1位! 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』 谷口菜津子が描く「らしさって何?」

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