母娘4頭のパンダの今後

 現在、パンダの中国国外への移動は保護や繁殖研究目的の貸与が原則で、中国が貸し出す際はオス・メスのペアが基本。岸本知事の7月24日(水)の会談では、オス・メスのペアかオスだけかといった話には至らなかったそうですが、もしオスだけが来たら、繁殖相手はアドベンチャーワールドにいるパンダとなる可能性もあります。

 現在いるのはメスの良浜(らうひん)とその娘3頭の計4頭。いずれも同パークで生まれました。中国などの研究によると、メスのパンダが繁殖できる年齢は20代前半までとされるので、24歳の良浜の繁殖は難しいかもしれません。娘たちのうち、結浜(ゆいひん)と彩浜(さいひん)はすでに発情しており、末っ子の楓浜(ふうひん)はまだ発情が確認されていません(今年4月時点)。

 ただ、中国がパンダを国外へ貸し出すようになって以来、基本的に、中国国外で生まれたパンダは繁殖のため中国へ渡っています。中国国外で生まれた良浜が中国国外で繁殖したのは、母親が良浜を妊娠した状態で来日するなど特殊事情が重なったためで、世界的にも稀有なこと。もし結浜、彩浜、楓浜のいずれかが中国国外で繁殖すれば、こちらも異例となります。

 今後、アドベンチャーワールドにオスのパンダが来るかどうかは、外交も絡むので予想できませんが、来ても来なくても、パンダたちが幸せに暮らせることを願います。

中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(12カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

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2024.09.22(日)
文・写真=中川美帆