「放電場 130」 Lightning Fields 130 2009 (c) Hiroshi Sugimoto, Courtesy de l’artiste et Gallery Koyanagi, Tokyo

 精緻な写真作品を中心とした多彩な芸術活動で知られる現代美術家、 杉本博司。彼の大規模な個展がパリのパレ・ド・トーキョーで4月25日(金)から始まる。展覧会のタイトルは「今日、世界が死んだ(失われた人類の遺伝子の保管庫)」。アルベール・カミュの小説「異邦人」の冒頭のフレーズ(今日、ママンが死んだ)を意識したタイトルには、人類が滅亡した後に、さまざまな架空の人物の視点で人類の滅亡を物語るという展覧会のコンセプトが込められている。杉本が準備した滅亡のストーリーは約30種。例えば、ある養蜂家は蜂の集団自殺が地球の砂漠化を進めたと語り、遺伝子研究者は想像力の広範な欠如が文明の消滅を引き起こすと述べる。

「最後の晩餐」 The Last Supper: Acts of God Collection of the artist 1999/2012 gelatin silver print (c) Hiroshi Sugimoto/Courtesy of Gallery Koyanagi

 展覧会ではそれらのストーリーを踏まえて、写真や立体などの作品と杉本が長年に渡って収集してきたモノを組み合わせたインスタレーションが展示される。収集品は古美術から化石まで多岐にわたる。それらのモノがアーティストの設定した文脈のなかで新しい輝きを見せるところにこの展覧会の面白さのひとつがある。

<次のページ> 10年ぶりの新作も発表

2014.04.05(土)
文=鈴木布美子