この記事の連載

 大島依提亜さんは映画や美術展のグラフィック、ブックデザインなどを数多く手がけるアートディレクター。中でも映画の世界観を印刷物というフィジカルなものに落とし込むマニアックなパンフレットはファンが多く、入手困難になることも。

 この連載では、大島さんが手がけた映画パンフレットを中心に、「映画の余談」をゆる~くしながら「大島さんの頭の中」を覗いていきます。聞き手は、その昔、大島さんと映画のパンフレットを作っていたこともある編集者・ライターの辛島いづみです。第1話はこちらから 


映画パンフレット作りの基本は故・川勝正幸さんに教わった

――今は、どんな映画のビジュアルに取りかかっているのか、という話から聞かせてください。

大島 現在は邦画を準備中です。黒沢清監督の作品に関わっていて。

――おお! 今秋公開される(9月27日公開予定)『Cloud クラウド』ですね。公式サイトによれば、主演は菅田将暉さんで、SNSが拡散する憎悪の連鎖と集団狂気を描くサイコスリラー。すでにポスタービジュアルも2種類公開されていますね。

大島 デザインしました。そして今回、タイトルもやらせてもらったんです。「動かしてみたいんですけど」って無理を言いまして。

――「Cloud」という文字にかかっている雲のような部分が動くんですか?

大島 そうです。めちゃめちゃうれしかったです。

ーーそういえば。現在、公開中のアニメ映画『ルックバック』のポスタービジュアルも大島さんが担当しています。大島さんがアニメ作品を手がけるのは結構レア。

大島 そうなんです。原作は『チェンソーマン』の藤本タツキさんの漫画で、数多くのアニメ作品に関わってきた押山清高監督が映画化をされたんです。主人公の声を河合優実さんが担当しているのも結構話題で。

――7月上旬の映画動員ランキングが、『それいけ!アンパンマン』を抜いて1位になったと。わたしは以前、漫画を読んですごく感動したんです。漫画に魅せられた二人の少女の青春物語で、自分の10代の頃を思い出すなあって。映画はまだ観られてないんですが。

大島 ぜひ観てください。ストーリーはコミックとほぼ同じですが、漫画とアニメの演出の違いがよくわかるので面白いと思います。

2024.08.26(月)
文=辛島いづみ
写真=平松市聖