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ネグロス島の最旬ファインダイニング

 ネグロス島はおいしいものに事欠かない島ですが、世界水準のファインダイニングというと、限られています。

 バコロド市から南へ、車を飛ばすこと約1時間余り(約55キロ)。古き良き漁師町でビーチリゾートでもあるハイニガランの市街地から、鬱蒼としたジャングルや畑を抜けたところに、まさかのファインダイニングがありました。

 その名は「サウマファーム バー&キッチン(SAUMA Farm, Bar & Kitchen)」。バコロド市にある人気レストランのオーナーであり、国際的な料理イベントにもフィリピン代表として参加している気鋭のシェフ、ドン アンジェロ コルメナーレスさんが家族で営む完全予約制のプライベートレストランです。

 料理はおまかせコースで7品ほど(1人7000円くらい。総予算は要相談)。地元の新鮮な旬の食材を使用し、ゲストに合わせてカスタマイズしたメニューを提供しています。今回はディナー利用でしたが、日中なら周囲に広がるファームを少し歩いて、料理に使われる食材を見学するなど、プライベートレストランならではの過ごし方も相談可能です。

 この日のスターターは、グァバジャムを添えた鶏レバーのパルフェ、チョリソ入りのルンピア(春巻き)、ピリ辛のスープが入った小籠包。魚はウリバライという淡水魚で、グアバチャン(発酵調味料)やココナッツのソースに発酵ミントオイルで風味づけ。

 サラダは、この地域の伝統的なスープ「LASWA(ラシュワ)」を再構築したもので、ナス、カボチャ、四角豆、タロイモの葉といった野菜をモリンガのドレッシングで。

 フィリピン風ラーメン「バッチョイ」も、ユニークなスタイルで登場。揚げた卵麺や米麺が入ったボウルに、ややとろみのあるボーンブロス(牛骨、豚骨などのだし)を注ぎ、自家製のチチャロン(豚皮を揚げたもの)をトッピング。おいしいスープを吸った揚げ麺の食感が楽しく、具材がないぶん、スープの複雑な旨みを堪能できます。

 肉料理のひとつは、ネグロス島名物のレチョン(子豚の丸焼き)のイメージ。低温でじっくりと火を入れた豚肉の表面を香ばしく焼き、タマリンドや生姜、にんにく、レモングラスを効かせたソースと、豚レバーのムースを添えています。一緒に魚の燻製入りフライドライスがついてくるのがフィリピンならでは。

 もうひとつの肉料理は、アドボ。やわらかく焼き上げたローカルビーフを、ココナッツビネガーや中国醬油、マスコバド糖などでつくる甘酸っぱいソースでいただきます。

 「日本やフランスなどのテクニックも取り入れながら、自分なりに島の食材へのリスペクトを表現していきたい」と話す、シェフ・ドン。食材への理解の深さと確かなテクニック、調和の取れた料理の数々は、国内外のVIPにも高く評価されています。

サウマファーム バー&キッチン SAUMA Farm, Bar & Kitchen

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2024.07.04(木)
文・写真=伊藤由起
協力=フィリピン政府観光省、shifumy(江藤詩文)
写真協力=Kazuki Kei Kiyosawa