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マニラで行くべき2つのレストラン

 マニラの中心地は、いまや東京に引けを取らない大都会。世界的企業のオフィスが入る高層ビル、ハイブランドが並ぶファッションビルやショッピングモール、レストランも、カジュアルダイニングからファインダイニングまでよりどりみどりです。フィリピンの美食シーンを体験するなら、やはりマニラは外せません。

フィリピン×イタリアの人気店

 ネグロス島からマニラまでは、国内線で1時間強。まず足を運んだのは、巨大ショッピングモール・ロックウェル内にあるレストラン「グレース パーク(Grace Park)」です。ネグロス島出身のシェフ・マルガリータ フォレスさんは、2016年「アジアベストレストラン50」で、アジアの最優秀女性シェフ賞に選ばれた実績の持ち主。10以上の支店があるカジュアルイタリアン「シボ(CIBO)」のオーナーシェフとしても有名です。

 「グレース パーク」では、ローカルの食材でフィリピン料理を捉え直し、マルガリータさんの真骨頂と言える、フィリピンとイタリアの食材と文化をかけあわせた料理を提供。

 例えば、フィリピン産の大きな川エビをカニミソやバター、にんにく、カラマンシー(柑橘の一種)のソースで仕上げた一品は、まさにフィリピン×イタリアンのハイブリッド。フィリピン人もイタリア人も(そして日本人も)大好きな味です。

 気取らず温かいダイニングの雰囲気と、フィリピンとイタリアの豊かな食が融合した料理の数々。初めてなのにホッとする、みんなが「大好きな味」がここにあります。

グレース パーク Grace Park

https://www.margaritafores.com/

最先端のファインダイニング「helm」

 マニラのフードシーンで、もっとも注目されているシェフの一人が、ジョシュ ボートウッドさん。コペンハーゲンの「noma」などで多彩な経験を積み、マニラで4つのレストランを経営しています。なかでも特に尖っているのが「ヘルム(helm)」。

 店内は、最奥にあるキッチンに照明があたり、客席はあえて暗くした劇場型のレイアウト。シェフのアイデアをビビッドに反映した料理をワクワクしながら眺め、味わい、その背景を謎解きのように考える、クリエイティブな食体験が叶います。

 メニューリストは、ほぼ素材だけが書かれたシンプルなもの。ただ、食後にくれるQRコードを読み込むと、もう少し詳しい情報が分かるようになっているので、メモや撮影はそこそこにして、食事を楽しみましょう。(ディナーコースは1万5,000円~25,000円くらい)。

 国際経験豊かなシェフのこと、ルーツとなるフィリピンやイギリスのテイストだけでなく、東南アジア諸国や北欧、東欧の食文化からもインスピレーションを得ているよう。なかには和のエッセンスを取り入れた料理もあります。

 例えば、「Chawanmushi,clam,dill」という一品は、そのまま日本の茶碗蒸しにヒントを得たもの。ムール貝やマテ貝などの複雑な旨みに、からすみとりんごのレリッシュ、ディルオイルの色と風味をまとわせていただきます。

 店名のhelmとは「舵」を指す言葉。この先鋭的なダイニングは、シェフ・ジョシュが自らの創造性とリーダーシップを発揮する場であり、その舵は自分自身が握っているのだと宣言しているかのようです。

 メニューは季節ごとに変わり、次に訪れるときは、まったく違う印象を受けるかも。シェフがどのような方向に舵を切るのか、楽しみで仕方ありません。

【協力】

フィリピン政府観光省 https://philippinetravel.jp/

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2024.07.04(木)
文・写真=伊藤由起
協力=フィリピン政府観光省、shifumy(江藤詩文)
写真協力=Kazuki Kei Kiyosawa