「あら、これは私ね。そっくりね。」
びっくりした。私は全くその気が無かったのだが、確かに言われてみると、脂肪細胞の人形はベッドに溶けて広がっている祖母の身体の形とそっくりだったのだ。結局、全ての答えは祖母に行き着いてしまうのか? 私は少しだけ恐怖を感じた。同時に、自分でもなぜ今まで気づかなかったのかというくらい、腑に落ちるものがあった。祖母は続けた。
「かわいいわね、一つちょうだい。」
「いいけど、これはばあびのつもりじゃなくて、私の脂肪細胞を作ってみたんだよ。」
「あらやだ! 脂肪細胞だなんて! そんな変なもの作るのやめなさいよ!」
「ははは(笑)。確かに、ばあびにそっくりでかわいいね。私の身体の中に、小さなばあびが大勢いるってことだね。やばいね。」
「あらまあ! いやね。でもね、私はいつでも青嵐の近くにいたいのよ。」
そう言って、祖母は私の作った脂肪細胞の人形を、ベッド横の壁に貼り付けた。なんだかんだデザインがとても気に入っているらしい。祖母はとても寂しがりやで、いつでも私がそばにいることを望んでいる。そして私自身、身体をほとんど祖母に乗っ取られていると言ってもいいくらいに、生活が祖母中心になっているのも事実である。
「おつけものっ! おつけものっ! おつけものっ!」
隣の部屋で作業に集中する私に、容赦なく訴えてくる祖母の空腹アピール。朝も昼も夕食もしっかり食べているはずじゃないか? 私の都合なんて、祖母は全くお構いなしだ。塩分だってそんなに摂らせたくない。しかしそんな祖母にイライラしつつ、やっぱり愛おしさが勝ってしまうのだ。冷蔵庫からたくあんのお漬物を少しだけ切って、祖母の元に持って行く。
結局、「太り」とどのように付き合っていけば良いのか、まだはっきりとした答えは出ない。それを考えていく中で浮上したのは、憎たらしい存在だった脂肪細胞の正体が、最愛の祖母なのかもしれないという疑惑である。もしかしたら、祖母の寂しさと私がどう付き合っていくのかということに、私の求める答えがあるかもしれない。今は、日々祖母の身体をケアする時間を通して(介護と並行して服作りをしている)、そのヒントを探っているところだ。
2024.04.05(金)