私は「今、太っている(ing)」というときの身体感覚がある。例えば、甘いケーキやお菓子、揚げ物を大量に食べてしまった時などに感じやすい。ちょうど肩や腕まわりと腰まわりが、ふわふわ、そわそわ、膨らんでいく感じがする。少しむず痒い感じだ。私はこれが、「脂肪」が増えるサインのように感じている。実際のところ、全く関係ないのかもしれないのだが、そう感じる部分には、身体のどこよりも脂肪がついているように見える。いわゆる、ぼこぼこした憎たらしく忌まわしいセルライト。Tシャツを着ると必ず袖からだらりと顔を出す、ぶよぶよのあいつだ。では、実際この脂肪はどのように増えていくのだろう。脂肪(組織)を構成する「脂肪細胞」について調べていく中で、思いがけない発見があった。

 生きるために必要なエネルギー源となる栄養を蓄える役割を持つ脂肪細胞。太れば太るだけ増えていくのだろうと想像していたが、実はそうではなかった。その数は、幼児期から青年期にかけて増えていくが、成人期に入る頃には総数がほぼ一定となるらしい(3)。そのため、太り始めると脂肪細胞は増えるのではなく、まずは大きくなる。しかし、脂肪細胞には大きくなれるサイズ的な限界があり、それを超えるほど太ることでようやく「増殖」を始めるというのだ。一方、一度増えた脂肪細胞の数は減ることはない(4)。つまり、ダイエットなどで栄養の供給が減っていくと、脂肪細胞はただ小さくなっていくだけなのだ。面白いことに、脂肪細胞は脂肪組織として最大に増えた状態を覚えており、細胞のサイズが小さくなると、元の状態に戻すため、食欲を増進させ、もっと栄養を蓄えるように働きかける(5)

 ……まるで、脂肪細胞は意志を持っているかのような話だ。若い頃に太ってしまった人が痩せにくいことや、リバウンドという現象も、このような脂肪細胞たちの性質を知ると納得してしまう。私が最高体重である125kgを超えたときの脂肪細胞たちは、きっと私の身体の中で大いに増殖し、盛り上がっていたことだろう。しかし、私は人生で3回ほど20~30kgの減量をしたことがある。食事制限ダイエットなのだが、その度に激しいリバウンドに悩まされていた。

2024.04.05(金)