そうなると、想像してしまうのが、私がダイエットをする度に小さくなっていった脂肪細胞たちの気持ちだ。仲間たちが次々に痩せほそり、お互いの距離が遠くなっていくにつれ、かつては密着し合っていた大勢の仲間との繋がりが失われ、孤立し、きっと寂しかったのかもしれない……(小さくなった脂肪組織を想像すると、確かにもの悲しさがある)。今思えば、私は彼らに随分と可哀想なことをしてしまっていたのだ。こう考えると、これまで司令塔だと思い込んでいた「私」よりも、身体の中にいる「脂肪細胞たち」の方が強い権力を持っているようだ。彼らは私の行動や身体全体を乗っ取ることで、仲間に囲まれ満たされていた過去の時間を、全力で取り戻しにかかってきていたということになる。

 今まで私は、意志の弱さが太りの原因であると思い自分を責めてきたのだが、脂肪細胞たちに支配されていたことを発見してから、まるで免罪されたかのように肩の荷が降りたのだった。

 それにしても、脂肪細胞はあまりにも寂しがりやすぎる。私の体重は4年ほど前の最後のダイエットによる減量後、いまだに右肩上がりに増え続けている(まだ最大の125kgは超えていないが、もしかして奴らは私をそこまで太らせるつもりなのだろうか)。無理に痩せなくてもいいが、せめて安定を願っている。とはいえ「なぜ太っているのか」「なぜ食べすぎてしまうのか」という問いに対する答えが、「脂肪細胞が寂しがりやすぎるから」というのでは、全く埒が明かない。そう、私が次に考えるべきなのは、その「寂しがりやの脂肪細胞たち」と、上手に付き合っていく方法なのだ。

脂肪細胞の「正体」

 その方法については皆目見当もつかないので、実は最近、私を支配する脂肪細胞たちの姿をイメージしてみることからはじめてみた。きっと、ぶよっとしていて、柔らかい。身体の大部分をお腹が占めていて、手足は短そう。色はくすんだ薄ピンクや、黄ばんだ白色といったところだろう。できたら、寂しさで私を支配するのでなく、お互いを助け合っていってほしい。ならば大量に作ってみるか……。なんてことを考えながら、気づいたら小さな脂肪細胞の人形を30個ほど作っていた。思いのほか可愛いビジュアルに気分が上がり、いろんな人に見せびらかしていたのだが、祖母に見せた時に思いがけない発見があった。

2024.04.05(金)