この物語は、800人以上の人にチワワのピンバッジが取りつけられるという事件が発生するところから大きく動き出します。その後、チワワに関わる奇妙な事件が連続して起こり、主人公たちはその謎に迫っていきます。

 主人公・琴美の親友で、「全肯定インフルエンサー」として人気を集めるミアの存在も、本作を彩る大きな特徴のひとつです。みんなの弱い心をすべて肯定し、「大丈夫だよ」と語りかけてくれるミアのキラキラとした魅力が妖しく光ります。

 チワワにまつわる奇妙な事件の数々、そしてミアの妖しい存在感。『チワワ・シンドローム』の象徴であるこの2つの要素と、釣部東京さんの作り出すキラキラ・ギラギラしたグラフィックが、ものすごくぴったりだと思ったのです。

すべての端緒は……

 ……と書いてきましたが、もとをたどると、実はすべての端緒は大前さんなのです。というのも、僕が釣部東京さんをしっかり認識するきっかけとなったピーナッツくんですが、僕がピーナッツくんのファンになったのは、大前さんのおすすめがあったからだったのです!

 ピーナッツくんを結び目として、僕のなかですべてがつながりました。これはもう、釣部東京さんしかいない!

 デザイナーさんと相談の上、すぐに依頼のメールを出したところ、「非常に面白そう」とお引き受けいただくことができました。オンラインでの打ち合わせを行い、その後いただいた一発目のラフを見て、大興奮。あまりの素敵さに一日中ニヤニヤしてしまいました。

 調整を重ね、ついに出来上がったのがこちらの装画です。

 そこにデザイナー・観野良太さんがタイトルなどを配置し、カバーに使う紙や印刷に使うインク・加工を決め、カバーが完成します。

 印刷においてこだわったのはインクです。題字や女性の目の周りに置かれた円形のモチーフなどに使われている印象的なピンクは、通常のマゼンタでは出せない色味でした。さらにシークバーや背景のビルの爽やかな青も、通常のシアンでは再現しづらい。

2024.03.05(火)