執筆で忙しい原田さんだが、仕事は思いもかけぬ早さだった。出版社から届けられたゲラを読んだぼくは、その面白さにひきずられて一晩で読んでしまった。確かに物語はぼくのオリジナルにほぼそって展開していくのだが、そのディテールにおいて、心理描写の繊細さにおいて格段の違いがある。なるほどこうすればいいのか、と思わずうなってしまうような箇所が随所にある。若い菅田将暉と永野芽郁のラブシーンもあるのだが、小説で読むと気持ちのゆらぎが巧みに描かれ、さすがは小説家だなと感心しながらもう一度そのシーンを撮り直したくなったりする。いっそこのノベライズを元にしてもう一度ぼくが映画を作り、それをまたまた原田さんがノベライズする、などという冗談めいたことをひとしきり想像したりして楽しんだものだ。
ともあれ、素敵な原作を映画化させて貰った上にこんな楽しい経験をさせて頂いた原田マハさんに心から感謝したい。
お帰り キネマの神様(文春文庫 は 40-7)
定価 660円(税込)
文藝春秋
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2023.11.27(月)