いま、「日本中を恐怖のどん底に叩き込む女性がいる」と話題になっています。それが京都に住むCoco(ココ)さん(26)。彼女の職業は「ホラープランナー」。業務内容は、なんと「お化け屋敷をつくること」なんです。日本中のさまざまなビルを、日本家屋を、ときにはカフェをもお化け屋敷につくりかえ、訪れる人々の背筋を凍らせてきました。

 怪談師でもあり、新刊『怪談怨霊館』(竹書房怪談文庫)で作家デビューを果たし、SNSの総フォロワー数は30万人を超えるホラー界のインフルエンサーでもあるCocoさん。恐怖とクリエイティブの融合を試行しながら新しい表現を模索するCocoさんに、お話をうかがいました。


全国にお化け屋敷をつくるのが仕事

――Cocoさんは「ホラープランナー」という職業に就いていますが、ホラープランナーとはどのような仕事なのでしょう。

Coco お化け屋敷の制作だったり、恐い場所の雰囲気づくりだったり、ご予算に応じてホラーテイストのコーディネートをやらせていただいています。

 もともと、「京都怨霊館」という常設のお化け屋敷がありました。私は2022年まで3年ほどそこの監修をしていたんです。京都怨霊館は築古の建物を使ったお化け屋敷で、大好きな場所でした。ただ、建物の老朽化の問題で2022年9月に閉館を余儀なくされてしまって……。

 それで去年の閉館後から、この3年の間に培った「恐がらせるノウハウ」を活かしつつ外部のお化け屋敷の制作や企画プロデュースをしています。現在10軒目くらいかな。

――この1年のあいだに10軒ものお化け屋敷に携わったのですか。すごい仕事量ですね。

Coco ありがたいです。私は「古風な建物で何かが起きる」という設定が好きなんです。それだからか、街の古い建築物に新たな命を吹き込みたいと考えている各地の方々の想いと重なって、依頼が相次いだのかなと思います。

――Cocoさんはお化け屋敷を制作する仕事で、昨日まで熊本県にいらっしゃったそうですね。

Coco はい。熊本市さんの主催で、日本の怪談や神話について多数の著書を遺した小泉八雲(こいずみやくも)氏の旧居を使い、8月に期間限定のお化け屋敷「八雲の怪談 ~海を渡った怖い話~」を開催しました。

 小泉八雲氏をずっと尊敬していたので、お化け屋敷というかたちで関わることができ、とても嬉しかったです。

――歴史ある文化財をお化け屋敷に変えるのは、たいへんではなかったですか。

Coco 気を遣いましたね。お客様が驚いて、元の設備を壊してしまう危険性がありますから。そういったアクシデントを回避するために、「ここは、走らせないようにしよう」「いったん座って、私の怪談をお聴きいただこう」など、工夫をしながらリスクを抑えました。

――お化け屋敷でCocoさんの怪談も聴けるとは、なんと贅沢な。お客さんはきっといい想い出になったでしょうね。手ごたえはありましたか。

Coco ありましたね。熊本にはお化け屋敷があまりないそうで、「お化け屋敷をやりたいが、どうすればいいのかがわからない」とご相談をいただいたんです。そうしてスタッフと一緒に手さぐりで進めていくうちに、毎日どんどん内容がよくなってきて。最終の公演が終わった時には「いいものができたね!」と、みんなで手を取り合って喜びました。

――お話をうかがっていると、Cocoさんが制作するお化け屋敷は地域活性化にもつながっていますね。

Coco 地域を元気にするお手伝いができているなら嬉しいですね。今年7月に舞鶴の商店街で開催した「舞鶴都市伝説お化け屋敷 シン・ロシア病院」は、本当にたくさんのお客様がお越しくださいました。

 もともとは舞鶴で大きな花火大会があり、イベントの目玉の一つとして「お化け屋敷をやりたい」という商店街の方からのご依頼だったんです。依頼主さんが幼い頃に体験したお化け屋敷の楽しさを「令和の子どもたちへ伝えたい」、そういった想いがあったようで。

 開催当日は商店街でお化け屋敷をするとは知らなかった人たちも「なになに?」と立ち止まってくれて、長い行列ができました。予定よりも早めに入場を制限したくらいなんです。

 閉会後、商店街の方々も「今の子どもたちも、お化け屋敷が好きなんだね」と、とても喜んでくださいました。大人も子どもも一緒に楽しんだ、いい1日でしたね。

2023.10.04(水)
文・写真=吉村智樹