ホラークリエイターが語る“本当に怖い”お化け屋敷

――Cocoさんは、どういうきっかけでお化け屋敷の仕事をするようになったのですか。

Coco 以前、京都に「ヤミチカ」という名のお化け屋敷がありました。1階が劇場で、地下がお化け屋敷という構造のビルがあり、オーナーさんは同じ人。私は1階の劇場で開催される怪談イベントに怪談師としてちょこちょこ出演していたんです。

 そしてオーナーさんが「お化け屋敷も1回、体験していきなよ~」と誘ってくださって。それでヤミチカに入ってみて、びっくりしました。足を踏み入れた瞬間から別世界。洞窟ふうで、とにかく凝っている。内装費に「概算1億円はかかっている」と言っていました。入った瞬間に「私もう無理かも」と言ってリタイアする人もいたくらい不気味なんです。

 それになにより恐いのは、人が出るんですよ。事前に「人が出る」なんて聞いていなかったし、どこから現れるかかがわからない。コースは迷路になっていて、自分がどこへ向かって進んでいるのかもわからない。そんな心の準備ができていない状況下で人から脅かされるんです。恐いですよ。ずっと悲鳴を上げていたし、それがおもしろくて新鮮でした。

――人が扮しているお化け屋敷って珍しいですね。

Coco 遊園地のお化け屋敷は、だいたい機械仕掛けですしね。そして館内で私のようにキャーキャー悲鳴を上げていたお客さんが、外へ出てくると、みんな笑ってるんです。「恐かったね~」と言いながら笑ってる。「ああ、楽しかったんだな」って。恐怖が笑いに変わる光景が私には驚きだったし、なんだか幸せな気持ちになりました。

 そして、「私もお化け屋敷の制作や演出をやってみたい」と思ったんです。そんな話をオーナーさんにしたら、「実はここをリニューアルするんだけれど、やる?」と言われ、「やります!」と即答しました。そうして「京都怨霊館」が誕生したんです。まさかのちに経営まで任されるとは想像していませんでしたが。

――20代の女性がお化け屋敷を引き継ぐって、かなり珍しい出来事だと思います。すぐにできましたか。

 いやあ、迷いに迷った3年間でしたね。「お客様がどうやったら『恐い』『でも楽しい』と感じてくれるだろう」、毎日そればかり考えていました。「こうしたら、もっと恐くて、おもしろいんじゃないか」といろいろと試行錯誤して、「ちょっと違う」と感じたら、また次へ。そうやって恐怖演出のスキルを磨いていく日々でしたね。

2023.10.04(水)
文・写真=吉村智樹