この記事の連載
- 「葬送のフリーレン」岡本信彦インタビュー#1
- 「葬送のフリーレン」岡本信彦インタビュー#2
慈愛をこめてフリーレンの名を呼んでいる
――ヒンメルとして誰に言葉を投げかけているのでしょう?
フリーレンに話しかけてはいるんですけど、言葉通りの意味ではなくいろんな思いが重なって声をかけているようにはしたいなと思っています。常に念頭にあるのが、フリーレンへのセリフはすべてフリーレンへの深い慈愛があるということ。子どもに対する愛情、母親への愛情、仲間としての愛情などいろんな愛情が複雑に入り乱れた様子を総称して、僕は慈愛と言っています。万感を込めて「フリーレン」と言っていますね。
――物語は、勇者ヒンメル、僧侶のハイター、戦士アイゼン、そして魔法使いのフリーレンによるパーティーが魔王を倒したところから始まります。人間であるヒンメルは寿命を迎え、残されたフリーレンは新たな旅をしながらかつての冒険の日々を思い出す。回想シーンとしてポイントで登場するのがヒンメルなので、内面をつかむのが難しそうに感じます。
本当に難しいです。フリーレン役の種﨑敦美さんが「フリーレンってすごい人なのにそう見えないときがある」とおっしゃっていたんですが、僕もヒンメルに同じことを思っていて。ヒンメルって強いのか弱いのか、原作を読んでいる最中はわかりませんでした。魔王を倒しているからそれなりに強いんだろうけど、優しそうなのに急に怒ったりする。言ってることは全くかっこよくないのに、かっこよく見えてくる描写もある。ナルシストに見えないのに「僕ってイケメンだろ?」と言うところも含めて、フリーレンと同様にヒンメルも矛盾を秘めたキャラクターなんですよね。でもフリーレンに対して優しくメッセージを語りかけるときは、本当にかっこよく見えるんです。
2023.09.29(金)
文=大曲智子
写真=鈴木七絵