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 2023年の秋アニメの中でも大注目の「葬送のフリーレン」。「週刊少年サンデー」で連載中の同名マンガを原作に、勇者とそのパーティーが魔王を倒した“その後”の世界を描く物語だ。勇者パーティーのひとりだった魔法使いのフリーレンは、1000年以上生きるエルフ。英雄として讃えられた勇者のヒンメルが人間としての寿命を全うするのを見送った後、“人を知る”ことをしてこなかった自分を悔い、“人を知るため”の新たな旅に向かう。寿命の短い人間を見つめるフリーレンの眼差しに、見る人はきっと明日からの生き方を考えるだろう。

 主人公のフリーレンに大きな影響を与える勇者ヒンメルを演じるのが、声優の岡本信彦さん。「僕のヒーローアカデミア」爆豪勝己役や「鬼滅の刃」不死川玄弥など感情を揺さぶるキャラクターを演じることも多い岡本さんだが、本作ではやわらかい空気をまとった人間味のある勇者を演じている。所属事務所社長を務め、幼少期から続けている将棋や大好きなスイーツで自身を癒す。多忙ながらも毎日を楽しく生きる岡本さんに、ヒンメルを通して感じたことを教えてもらった。【前篇】を読む


「僕は断然1000年生きたい」

――フリーレンのように1000年生きるか、人間として今まで通り生きるか。選べるとしたらどちらを選びますか。

 僕は断然1000年生きたいです(即答)。1000年も生きると孤独にもなると思うんですが、それも受け入れます。1000年先の未来がどうなっているかを知りたいですね。スマホのようなガジェットも含め、いろんなことが移り変わっているでしょうから。ただ問題は、1000年間どうやって稼いで食べていくか。時間はたっぷりあるし、農業がいいかなぁ。

――事務所社長の岡本さんらしい悩みですね。それでは、今、人間としての人生を後悔しないよう生きるため心がけていることはありますか。

 これはヒンメルと同じで、楽しんで生きようとしていますね。楽そうな道と苦しそうな道があったら、僕は苦しそうな方を選びがちです。好奇心もありますが、ただ楽なことってあまり好きじゃない。何もしないのって僕はすごく苦しいんですよ。休みの日に家でずっと寝ているとかありえない。することがなくても何かしたくなっちゃいます。声優を始めたばかりの頃はこの仕事があまりに刺激が強すぎたのか、休日は寝ていましたけど。だんだんその刺激に慣れてしまったのか、無限に動こうとするようになりました。

2023.09.29(金)
文=大曲智子
写真=鈴木七絵