この記事の連載
配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。今回は、現在放送中のドラマ『姪のメイ』のプロデューサーを務める、青野華生子さんにお話を伺いました。
幼少期から宝塚観劇。「テレビにはまったく興味がなかった」
――青野さんは2022年初頭まで テレビ東京にいらっしゃいましたが、その前は別のお仕事をされていたそうですね。
そうなんです。大学時代から演劇をやっていて、卒業後も芸能事務所で舞台制作の仕事をしていました。
――就職活動でもテレビは受けていない?
受けてないです。まったくテレビに興味がなくて……。母親が宝塚好きで子どもの頃から舞台に通っていたし、習い事もしていたのでテレビを観る環境になかったんです。なので、まさか自分がこういう仕事をするようになるとは思わなかったです。
――テレビ番組に対する思い入れが強かったわけではないんですね。そこからなぜテレビの仕事に?
もともとやっていた演劇の仕事というのが、ナイロン100℃やケラリーノ・サンドロヴィッチさんのプロデュース公演などの制作が主だったんですね。KERAさんがテレビ東京でドラマ『怪奇恋愛作戦』(2015年)を手掛けたときに初めてテレビの現場に関わって、「ドラマってこういうふうに作るんだ」と知りました。演劇とドラマは違うんですけど似ている部分も多々あって、そこで「演劇じゃなきゃ」と、絞らなくてもいいのかなと思うようにはなりました。
――演劇のお仕事はどれくらいの期間やっていたんですか?
5年くらいですね。幅広くいろいろやらせてもらったり関わった作品が読売演劇大賞をとったりもして、自分の中でやりきった感じがあって「もういいかな」と思って辞めました。それから少し経った頃に『怪奇恋愛作戦』のプロデューサーから電話がかかってきて「ちょっと忙しいから手伝ってくれない?」というようなことを言われて、面白そうだなって。新しいことをできそうでワクワクしました。それが2018年ですね。
――「面白そう」くらいの感じだったんですね。じゃあ明確にテレビの世界でやりたいことがあったわけでは……。
なかったです(笑)。人生の設計について「目標型」と「展開型」みたいなことを言うじゃないですか。私は完全に展開型で、その場その場で興味が向いたことや「やってみたら?」って言われたことに乗っていくタイプなんです。根が適当なので、ひとつの目標に向かうことができる人はかっこいいなと思います。
――テレビ東京入社当初はどんなお仕事を?
APとしてプロデューサー業務をやりつつ、年間のドラマ作品全部のSNSやPR周りも手掛けてました。「自分で企画して何かつくりたい」とは当初はあんまり思ってなかったですね。
――そこでやっていた仕事ではどんな手応えややりがいがありましたか?
『サ道』(2021年)でAPをしていて、ここでもSNSの運用をやっていたんです。Twitterでサウナ好きの人がサウナ愛を語っていくリレー企画「#サリレー」というのを自分で提案して実現したんですが、ドラマと関係ない人たちを巻き込んで展開していくSNS施策が珍しかったみたいで、新聞社から取材を受けたりしました。そういうところでは手応えややりがいがありましたね。
多分、私の熱の入れ方が極端で、ガッチリやりすぎていたんだと思います。自分でも今振り返ると「よくやったな」って(笑)。テレビの世界の暗黙のルールみたいなものを何もわかっていなかったからできたんだと思います。
2023.09.21(木)
文=斎藤 岬
写真=平松市聖