この記事の連載

 配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。

 今回は、くりぃむしちゅーファンの間では知らない人はいない!?、フリーランスで活躍する、岡部知穂さんにお話を伺いました。

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「有田さんは些細な行動ひとつを褒めてくれる、素敵な人」

――大ファンであることを前面に出して仕事するのはメリット・デメリットがあるじゃないですか。そこはどう考えているのか気になっていたんですが、やはり迷いもあったんですね。

 正解ではないとはずっと思ってました。でもこれだけは曲げられないなって。本人たちには「死ぬまで一緒にいる」って言ってるんですよ。私多分、あの二人がいない世界で生きていけないと思います。

――もはや神様じゃないですか。

 実は、『くりぃむナンタラ』を辞めることになったときにお二人が小田さん(番組プロデューサー)に「YouTubeに岡部を残して欲しい」って直訴してくれて、それで戻ることができたんです。

――え! 

 後で小田さんから教えてもらって、めちゃくちゃ感動しました。なぜかくりぃむさんはそれを認めてくれないんですけど……(笑)。結局くりぃむさんか小田さんかどっちかはわからないのですが、どっちにしても未だに嬉しいですね。一生ついていこうと思ってるし、毎日くりぃむさんのことを考えてます。本当にずっと神様みたいなもので、どれだけ一緒に仕事をして慣れてきてもそこは変わらないですね。

――そんなことがあったらますます信仰が篤くなりますね。ずっと画面越しに観てきた憧れの人たちと仕事をしてみて、あらためて尊敬の念を抱いた部分はありますか?

 私ごときがすみませんという感じですが、まず有田(哲平)さんはやっぱり企画力が抜群です。『くりぃむナンタラ』は有田さんとスタッフが企画会議をしてつくってる部分が大きくて、その力が番組の核になっているなと思います。

 それと、有田さんは観察力がすごい。ADだった頃、スタッフ全員でご飯を食べに行ったときに有田さんが近くの人と企画の話をしているのが聞こえてきたんです。私はADなので有田さんからは遠い席だったんですけど、耳をすまして聞いて、机の下でメモしてたんですね。そしたら有田さんがパッとこっちを見て「岡部ちゃん、そういうところだよ」って褒めてくれて。「見えてたの!?」って衝撃でした。ちょっとしたことをちゃんと見ててくれて、こんな下っ端の些細な行動ひとつを褒めてくれる、素敵な人です。

――めちゃくちゃいい話です。

 上田さんはもう、ツッコミの速さ、頭の良さがすごい。初めてちゃんと番組に関わって素材を観たとき、ツッコミが速すぎて鳥肌が立ちました。20年くらいくりぃむさんを撮り続けてるカメラマンでさえ追いつけてないくらい速くて、感動してその場面だけでも100回観ましたね。

 それに、やっぱり有田さんと同じで人間力があるんですよね。上田さんはめちゃくちゃ謙虚なんですよ。普段から結構しゃべってるんですが、私が仕事で落ち込んだ話をすると「まずは目の前のことを前向きに、一生懸命やれよ」って毎回言われるんです。それは上田さん自身がそうだからなんですよね。最初は本当にただただ憧れだったんですけど、今は「上田さんみたいに生きたい」って、人間としての目標になってます。

2024.07.19(金)
文=斎藤 岬
撮影=平松市聖