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「周りに“女性っぽく”扱われないことは居心地よくもある」

――岡部さんは「ナンタラちゃんねる」ではよく出演もされていて、名物ディレクター的存在になってますよね。

 そうなのかな……(笑)。出たいわけじゃないんですよ。目立ってもいいことはないんで。

――やはりそういう認識なんですね。テレビ業界では昔から裏方を表に出す文化がありますが、コメント欄やSNSで視聴者の声が直接届く今のメディア環境だとリスクは高まっていると思います。

 そうですね。アンチコメントを書かれたら人間として普通に傷つきますよ。くりぃむさんと仕事できてるし、応援してくれる人もいるからいいとは思ってますが。

――動画のコメント欄では「かわいい」というような書き込みもありますが、ストレスにならないですか? 知らない人から容姿に対して何か言われるのは嫌な気持ちになりそうだなと。

 そこはわりと平気ですね。そもそも私、人に「かわいい」と思われたい気持ちがあんまりないんです。言われたら言われたで嬉しいですけど。仕事と関係ない飲み友達からよくブスいじりされるんですが、全然気になりません。だからコメントで「マスクとったらブサイクだな」とか書かれていても余裕ですね。

――なるほど。バラエティやお笑いは長年にわたって男性が制作の中心にいたと思います。働く中で男女差のようなものは感じますか?

 私自身は「女性っぽい」感性みたいなものをディレクターとして武器にすることが全然できなくて、そこはむしろコンプレックスです。そもそも脳内が女性っぽくないからだろうし、そういう性格だから周りも自分を女性として扱わないし。それが心地よくて楽なところはあります。

 ただ、現実的なことをいうと体力面の壁はあります。睡眠不足や帰れない日が続くと体調を崩すこともあるので、体力を削ってやってるところはあると思いますね。だから女性ディレクターはどうしても寿命というか、限界がある気がしてます。すごく年上の女性ディレクターってほとんど会ったことないんですよ。一度だけ、60歳くらいの方にお会いしたことがあって「すげぇな」と思いました。

――局員はいずれ演出やプロデューサーになっていくことが大半なので、ずっと現場のディレクターとなると制作会社やフリーの方が中心ですよね。たしかに、その領域は特に男性が多いイメージです。

 そこをやり遂げたいという気持ちはありますね。「女性だから無理」みたいには思われたくない。くりぃむさんがいる限り、私は粘りますよ。

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岡部知穂

福岡県出身。フリーランスのディレクター。YouTube『ナンタラちゃんねる(くりぃむナンタラ公式チャンネル)』のほか、『街グルメをマジ探索!かまいまち』(フジテレビ)、『ZIP!』(日本テレビ)内「流行ニュース キテルネ!」コーナーなどを担当。なお、着用しているTシャツのQRコードは「ナンタラちゃんねる」のURL。
https://www.youtube.com/@creamnantara

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Column

テレビマンって呼ばないで

配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。

2024.07.19(金)
文=斎藤 岬
撮影=平松市聖