この記事の連載

◆12位『ダイヤモンドの功罪』平井大橋

 運動の才能に恵まれた小学生の綾瀬川次郎。テニス、体操、水泳……何をしても圧倒的才能を感じさせてしまう主人公に大人たちは夢中になり、比較される他の子どもたちは劣等感を抱く。

 自分のせいで負ける人がいる、自分のせいで夢をあきらめる人がいる。孤独に悩む中、仲間とスポーツを楽しみたい綾瀬川がやっと見つけた自分の居場所は、負けても皆が笑っているような弱小野球チームだった。しかし、そこでも彼の才能は見出されてしまい――。

 『週刊ヤングジャンプ』(集英社)で連載中。既刊2巻。

「才能のかたまりのダイヤモンドによって周りの人間がぐちゃぐちゃにされてゆく漫画です。まだ1巻ですがこんなに夢中になって読み返してしまう野球漫画は初めて。このまま読み進めたら一体どこに連れて行かれるのか楽しみでなりません……」(コナリミサトさん マンガ家)

「ど、どえらい! と1話目から震え上がった作品。ひとりの天才によって周りの子どもたちは心折られ、大人たちは狂い、そんな周りの様子に心を病む天才、地獄! 連載以前の読み切り4篇も一緒に読むとさらに情緒がぐちゃぐちゃになる」(宇垣美里さん フリーアナウンサー・女優)

「感情と感情のぶつかり合いが至高。運動の能力がずば抜けているせいで、自分は友達と楽しく野球をしたいのに自分のせいで負ける人や夢をあきらめる人がいる。その孤独にスポットライトが当たっています。大きな才能に対し、悔しい思いをしてきた人にとっても身をえぐられるような読書体験」(犬山紙子さん イラストエッセイスト)

「内容を映すタイトルが秀逸。1巻はその「功」より「罪」に重心を置いて描かれ、ずっと胃が痛い。まだ幼い主人公が苦しむ姿を見ても尚、天才へのワクワクが止められない己の残酷さと向き合うのがつらい……でも面白過ぎて読むのをやめられない!」(門倉紫麻さん ライター)

コナリミサト(こなり・みさと)さん
マンガ家

2004年『ヘチマミルク』(宝島社)でマンガ家デビュー。著書にドラマ化もされた『凪のお暇』(秋田書店)『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン)など。

宇垣美里(うがき・みさと)さん
フリーアナウンサー・女優

2014年にTBSに入社。19年に退社し、現在はフリーアナウンサーとして多方面で活躍。『週刊文春』で『宇垣総裁のマンガ党宣言!』を連載中。

犬山紙子(いぬやま・かみこ)さん
イラストエッセイスト

多くの雑誌で執筆のほか、メディアでも活躍中。ゲームやマンガなど、2次元コンテンツ好き。著書に『アドバイスかと思ったら呪いだった。』(ポプラ文庫)。

門倉紫麻(かどくら・しま)さん
ライター

主にマンガにまつわる記事を企画、執筆。マンガ家へのインタビュー多数。著書に、ジャンプ作家の仕事術を取材した『マンガ脳の鍛えかた』(集英社)など。

2023.09.17(日)
文=CREA編集部
写真=平松市聖