森田恭通は数年にわたりヴェルサイユ宮殿を度々訪れ、四季によって異なるニュアンスをもたらず陽光にこだわりながら、黄金と光の煌めきに満ちたバロック建築の傑作をモノクロ写真に収めてきました。本展では独自の審美眼でとらえたヴェルサイユ宮殿の多彩な表情を作品約100点で紹介します。
永い歴史の中で、権力者が変わるたびに塗り替えられてきたディテールが絡み合うヴェルサイユ宮殿のデザインを、森田は追い続けました。贅の象徴であった噴水の地下に眠る貯水槽、マリー アントワネットが愛した荘厳なオペラ劇場の下に隠された木造構造など、通常は入ることができない舞台裏にも足を踏み入れ、途方もない栄華の痕跡を丁寧に切り取っていったのです。
真夜中を除き、ほぼ自然光で撮影された作品群は、刻々と変化する光に映し出された“陰”としての人間の業を捉えているかのようです。谷崎潤一郎の同名の随筆にちなんで「In Praise of Shadows(陰翳礼讃)」と題された本展に寄せ、森田は「どの時代にも変わらない人間の“光と陰”を写すためにヴェルサイユ宮殿ほどふさわしい空間は存在しない」と述べています。
■森田恭通 Yasumichi Morita
1967年大阪生まれ。GLAMOROUS co.,ltd.代表。インテリアに限らず、グラフィックやプロダクトといった幅広い創作活動を行っている。また、アーティストとしても積極的に活動しており、2015年より写真展をパリで継続的に開催している。
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2023.09.20(水)
文=CREA編集部