この写真からどんなことを想像するだろう。設計図? 数学? はたまたアート作品……。これは、レザーブランド「YOSHIE ISHIGURO」が生み出すバッグの展開図であり、パターンだ。

 この図を描いたのは、京都・京丹波町を拠点に活動している石黒由枝さん。2022年12月に、自身の名を冠した「YOSIE ISHIGURO」を新たに立ち上げた。現在、自由が丘のDIGINNER GALLERYにてYOSHIE ISHIGURO exhibition【#1折】を開催中だ。

 兵庫県西宮市出身の彼女は、6年前に京丹波町へ移住。西宮から京丹波ヘ。同じ関西圏とはいえ、かなり雰囲気が異なる場所だ。移住の背景、そして今回の展示の根幹を聞いてきた。


「都会は好きですが、同時に田舎も大好きで。いつか田舎暮らしをしてみたいなという想いはあったので、5年くらい物件を探しているうちに、今の家を紹介していただいたんです。あまりにも景色が素晴らしくて、即決でした! こだわって選んだ場所ではなかったけれど、徐々にコミュニティが広がり、ある時猟師さんに同行して山に入らせてもらえる機会をいただけて。猟の様子を最初から最後まで見届けることができたんです。過酷な自然の中で動物たちが一生懸命生きている証を目の当たりにして、革を扱うものとして動物や自然との関係を以前よりも意識できるようになりました。移住して本当によかったと思っています。京丹波、おすすめですよ」(石黒さん・以下同)

「独立したばかりのころは完全オーダーメイドで、お客さまがご希望するものはすべて取り入れるという、贅沢な革製品を仕立てていました。国内外の厳選した素材を使い、今まで培ってきた技術をそそぎ、時間をかけて完成する1点は、一言で表現するならば、“加える”でした。もちろんそれもいいものを生み出したという自負はありますが、オリジナルを作っていこうとした時、『そぎ落としてみよう』と思ったんです。デザイン的に言うと、線の数を減らして、パーツも減らしました。その結果生まれたのが、“折”というコレクションです」

「点を中心に革を折り、圧をかけると張力が働き、立体的になります。折ることで生まれる、革のシワの美しさ、陰影がとても美しいことに気づきました」

 折ることによって、革の反発力が発揮され、ボタンなどの留め具を革に縫い付ける必要もなくなくなったそう。

「シンプルだけど機能性の高さも両立させています。正方形や長方形の中に、点と線だけ。そのふたつの配置が違うだけで全く異なる型のバッグが生まれます。使う素材を極限まで削ぎ落としても造形は無限。おもしろいですよね」

 今コレクションでは、それぞれのバッグの展開図をバッグと一緒に展示することで、革の持つ適度な塑性と弾性、そしてバッグがどのように出来上がっているのかが想像できるようになっている。

 バッグはオーダーも可能で、受注から3カ月ほどで手元に到着する。革の経年変化を楽しみながら、生涯使い続けたい一点物として選んでみてはいかがだろう。

 YOSHIE ISHIGURO exhibition【#1折】にぜひ足を運んでみて。

●YOSHIE ISHIGURO exhibition【#1折】

開催場所 DIGINNER GALLERY
所在地  目黒区自由が丘1-11-2
営業時間 11:00~19:00(最終日のみ17:00)
電話番号 03-6421-1517
休廊日 月曜
https://diginner.com/

YOSHIE ISHIGURO

Instagram @yoshieishiguro
公式HP https://yoshieishiguro.jp/

2023.08.23(水)
文・撮影=CREA編集部