日本三景の「天橋立」で知られ、海の京都を代表する港町として栄えてきた宮津市。山間部には美しい棚田が広がり、地元産の米を使った酢づくりや酒づくりが行われています。宮津の豊かな風土に育まれた発酵食品を巡る旅へご案内します。
美しい棚田で農薬を使わずに栽培した新米を使ったお酢づくり
まず訪れたのは、1893(明治26)年に創業した「飯尾醸造」。現在、日本でお酢をつくっているメーカーは約400社とも言われますが、その中で唯一、自社で栽培した米で清酒を醸し、酢をつくっている醸造元です。
飯尾醸造が無農薬の米づくりに取り組み始めたのは1964(昭和39)年。現当主で5代目の飯尾彰浩さんの祖父が道を切り開き、父の代になった2002(平成14)年からは、高齢のため引退を決めた契約農家から棚田を借り受け、蔵人自ら米づくりを行っています。
酢の原料となる米は、丹後の棚田で農薬を使わずに栽培した新米のみを使用。精米も自社で行い、毎年冬になると杜氏と蔵人が手作業で米麹をつくり、約40日かけてお酢のもとになる酒を仕込みます。
2023.08.12(土)
取材・文=田辺千菊(Choki!)
撮影=志水 隆