この記事の連載
京都北部の旅 #1
京都北部の旅 #2
![伊根湾に沿って軒を連ねる舟屋。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/4/1280wm/img_34de1d0418050c61c2aba1d180d30384200865.jpg)
京都北部の日本海に面した小さな町・伊根町は、古くから漁業が盛んで、「舟屋」と呼ばれる独特の建築文化が残るエリア。舟屋をリノベーションした飲食店や宿も点在し、海を近くに感じながら過ごせるのが魅力です。
国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている風情ある町並みや、伊根の暮らしに触れられるスポットをご紹介します。
約270年続く日本で一番海に近い酒蔵
![舟屋群の一角にある「向井酒造」。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/3/1280wm/img_53b693039a67493a1ba92d648dd01486182130.jpg)
![山側にある母屋では日本酒や酒粕などが買える。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/6/1280wm/img_86176b881800ed83a52b9d2469cb1a89179743.jpg)
伊根町に伝わる「舟屋」とは、1階が船のガレージになった2階建ての木造建築のこと。江戸初期に確認され、現在も伊根湾沿岸に約230軒が軒を連ね、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。1754(宝暦4)年創業の「向井酒造」もこの一角にあり、「日本で一番海に近い酒蔵」と言われる造り酒屋です。
![杜氏の向井久仁子さん。明るく大らかな人柄でファンも多い。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/e/1280wm/img_ee347cca59fe8008a7dad162da19f821117912.jpg)
13代続く歴史ある酒蔵で、1999年から杜氏を務めるのは向井久仁子さん。京都初の女性杜氏としても話題を集め、純米酒をテーマにした酒造りに情熱を注いでいます。
![古代米を使用した赤い日本酒「伊根満開」。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/d/1280wm/img_4dc04def3d0257eeacacb83e5e6d7775184236.jpg)
看板商品の「伊根満開」は、紫小町という古代米を使用した日本酒で、向井さんが大学時代の卒業研究として開発に取り組み、杜氏になって商品化に成功した思い入れのあるお酒です。見た目はワインのように赤く、口に含むとフルーティーな甘酸っぱさが広がる、唯一無二の味わいに醸しています。
![伊根満開の熟成酒粕。カカオのような風味が感じられ、洋食とも相性抜群。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/1/1280wm/img_612563466fbaa3aec75d449c51c84de9120937.jpg)
![ラベル貼りも1本1本手作業で行う。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/7/1280wm/img_d7dc1bf73901fc5b9dd8b9104c13bab7147671.jpg)
伊根の舟屋群は、海側に舟屋、山側に母屋があるのが一般的で、向井酒造では母屋に店舗を構え、舟屋を仕込み蔵として利用しています。仕込みから出荷まで、ほとんどの行程を手作業で行うため、年間生産量は約500石(1升瓶で5万本)ほど。京都市内でも手に入る場所は数えるほどという稀少さゆえ、現地を訪れる楽しみがあります。
![代表銘柄の「京の春」や、棚田米を使った山廃仕込み特別純米無濾過生原酒「うらなぎ」など、純米酒が揃う。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/9/a/1280wm/img_9a7060fc43e83494f42df568903159b0117761.jpg)
![伊根満開の酒粕を使った「赤米酒粕アイス最中」600円。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1280wm/img_2d70109f6883a559daaa5b76198783c185093.jpg)
売店で買い物をすると、舟屋から海に突き出た浮き桟橋でくつろぐことも。伊根湾を眺めながら、「赤米酒粕アイス最中」を味わえばクールダウンできて、散策途中の休憩にぴったりです。
向井酒造
所在地 京都府与謝郡伊根町平田67
電話番号 0772-32-0003
営業時間 9:00~12:00、13:00~17:00
定休日 木曜日
https://kuramoto-mukai.jp/
2023.07.25(火)
取材・文=田辺千菊(Choki!)
撮影=志水 隆