この記事の連載
悩んだときは、大きいほうを選ぶのがいい
次に何か選ぶとしたら、やはりメインに使えるうつわでしょうか。
ここは七寸(直径約21センチのもの)がいいか、八寸(直径約24センチのもの)がいいか迷うところ。作家さんも同じデザインで七寸、八寸両方作られることが多いんです。手に取ってみてなお悩まれるようであれば、大きいほうを選ぶのがいいと私は思います。
ハンバーグやしょうが焼きのようなメニューは七寸だとちょっと窮屈になりがち。八寸だと、盛ったときに余裕が出ます。その余裕が全体をきれいに見せてくれるんです。
こちらのお皿は私も持っていますが、使用頻度がとても高いんですよ。ちょっとシンプルすぎるように思われるかもしれませんが、和食、洋食、どちらにもよく合うんです。ハンバーグなどの肉料理と付け合わせをのせてもいいし、パスタやカレーもよく映えます。
見込み(皿の底)からリム(一段上がった縁のこと)の部分までがなだらかなので、リムの部分にも盛ることができる。八寸皿や七寸皿はフラットすぎない、気持ち深さのあるものが盛りやすいと思います。
飯碗、八寸皿か七寸皿と来たら、次は小鉢でしょうか。副菜を盛るものですね。これは今までと違って、思いっきり好み優先で選んでほしいです。作家さんも小鉢となると遊び心を発揮した、ユニークなものをよく作られるんですよ。
暑い時期ならガラスの小鉢もおすすめです。たとえば既製品のもずくの酢の物をガラスの小鉢に移し替えるだけでも、食卓の雰囲気はガラッと変わります。
蕎麦猪口(ちょこ)は副菜を盛るのにもいいんですよ。「一器多用」なんて私たちは言いますが、お茶を飲むのにも使えるし、アイスなどのデザートを入れるのもいい。いろいろ便利な存在なのです。
それから、オーバル(楕円形のうつわ)もひとつあると便利ですね。パスタや炒めものを盛るのにとても便利なうつわ。盛るときのコツは「両脇にちょっと余裕をもたせる」ことだけ。それを守れば、フライパンからざっと料理を移すだけで意外と様になるんです。
色みのことを言うと、茶系は万能ですね。どんな料理ともなじみやすい。ただし、アースカラー系統は使いやすいんですが、そればかりだと食卓の彩りが沈みがちに。そんなとき、鮮やかな色の小鉢がひとつあるだけでグッと華やぐんです。ピンク色なんて、意外と赤いトマトが映えてハッとするような色合わせになったりもします。慣れてきたら、ぜひ様々な組み合わせを試してください。
いろんなことを申し上げてきましたが、作家さんのお皿は「出合いもの」です。いいなと思ったらそのときに買わないと、再びは出合えないことがほとんど。うちのギャラリーでも「数日前に見て気に入ったので、やっぱり買おうと思って来たんですが……」「残念ながらもう売れてしまいまして」なんてことが本当によくあるんです。ときめいてしまったら、どうぞ自分の思いを最優先になさってください。
千鳥
所在地 東京都千代田区神田三崎町3-7-12 清話会ビル2階
電話番号 03-6906-8631
営業時間 12:00~18:00
定休日 不定休
https://chidori.info/home/
白央篤司
フードライター。「暮らしと食」をテーマに、忙しい現代人のための手軽な食生活のととのえ方、より気楽な調理アプローチに関する記事を執筆する。近著に『台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集』(大和書房)がある。
https://www.instagram.com/hakuo416/
Column
うつわのある暮らし
食を彩る素敵なうつわとともに日々を過ごす。憧れるけどなにから始めたら? フードライターの白央篤司さんが、「うつわのある暮らし」を始めるヒントを探りに、うつわの専門家を訪ねました。
2023.07.30(日)
文=白央篤司
撮影=平松市聖