この記事の連載

 うつわのある暮らしには憧れるけれど、どんなアイテムが使いやすいんだろう……? うつわを手軽に、上手に暮らしに取り入れるためのヒントを求めて、達人たちを訪ねました。


◆Vol.7 お話を聞いた人 奥村忍さん

 1980年、千葉県生まれ。大学卒業後、商社勤務などを経て、2010年ウェブショップ「みんげい おくむら」をオープンする。日本の民藝のうつわを中心に、世界を旅して集めた市井の人々が使う食器や生活用品などを幅広く扱う。自身も食べること、飲むことをこよなく愛する。


一番に買いたいもの、二番目に買いたいもの

 最初に買うものを選ぶときは、「自分の生活で一番よく使っているものは何か?」を考えてほしいです。たとえば、コーヒー党の方ならマグでしょうね。マグといっても、いろいろな形のものがあります。形状も様々なら、容量も違う。普段飲まれていて、ちょうどいい量が入るな、と感じる大きさはどのくらいか。ハンドル部分の指の入り具合でちょうどいいと感じるのはどのくらいの大きさか、厚みか。一度にたくさん淹れて、温め直しつつ飲まれる方であれば、レンジ可かどうかもチェックしてから買われるといいです。

 パン党の方なら、シーンを考えてみてください。ひとりの朝食用のパン皿なのか、家族みんなで朝やお昼に食べるとき使う用か。あるいはサラダなどを一緒に盛れるほうがいいのか。そして普段よく食べているパンはどんなものが多いだろうか。食パン、あるいは総菜パン、どちらをよく召し上がるでしょうか。パンの形によっても置きやすい皿は変わってきます。

 デザインや色、肌ざわりなどが気に入ったものを選ぶのはもちろんですが、そういういろいろなことを想像してから決めると、長く愛用できるものが見つかりやすいと思います。

 ごはん党なら、やはりごはん茶碗ですよね。一般的なごはん茶碗は直径が12センチ程度です。少し多めに食べたい人は13~13.5センチぐらいのものを選ばれるといいでしょう。お子さん用なら10.5センチぐらいの大きさのものがよく作られています。ただこの大きさ、大人がお酒を楽しんで最後に軽くごはんを食べたいときにもいいんですよ。大体ごはんが60グラムぐらい入る感じでしょうか。

 ごはん茶碗を選ばれるときには、米の色を考えてみてもいいのでは。普段は白米ばかりという方なら、うつわの内側に色みや柄のあるものでも面白いです。玄米や雑穀入りのお米が多い方なら、内側が白色で無地のものが合いますね。

 二番目に買うとしたら、「最初に買ったものの横に何を置きたいか」を考えてみてください。パン皿を買われたなら、横にマグを置くか、お菓子やデザートをのせるようなお皿を置くか。あるいはサラダが入るような深さのあるお皿でもいいですね。ご自身の普段の生活において、どういう組み合わせが多いでしょうか。

 ごはん茶碗を買われた人なら、主菜をのせるお皿を横に置かれるでしょうか。メインのおかずをのせる場合、どういうお皿が使いやすいかにはかなり個人差があります。お皿の厚みひとつ取っても、厚いほうが心地よい人もいれば、厚さのあるものは使いにくいと思う人もいる。日常、汁気のあるおかずをよく作られるのであれば、少し深さのあるお皿を選んでください。

 ちなみに、私が取り扱う民藝のお皿というのは多少の深さのあるものがほとんど。向き不向きがあり、深さのあるものは和食なら刺身、洋食ならピッツァなどを置く場合はのせにくいという面もあることをお伝えしておきます。

2023.10.03(火)
文=白央篤司
撮影=平松市聖