この記事の連載
うつわのある暮らしには憧れるけれど、どんなふうに集めていったらいいんだろう……? うつわを手軽に、上手に暮らしに取り入れるためのヒントを求めて、達人たちを訪ねました。
◆Vol.13 お話を聞いた人 高橋千恵さん
文房具メーカーで企画・デザインの仕事に携わった後、窯業訓練校で学び、食器ブランドに就職。販売から企画、百貨店への卸業務などに従事した後に独立。2007年に東京都国立市で「黄色い鳥器店」をオープンする。うつわ以外にも工芸品や民芸品、布、アクセサリーなどを独自のセンスで幅広く揃える。都心や他県から通うファンも多い。
https://www.instagram.com/ckiiroitori/
うつわは洋服選びと同じ感覚で
「最初に買うとしたら、どんなうつわがいいのか」と迷われること、ありますよね。こういうのが間違いない、無難に使いやすい、といった決まりごともあると思うけれど、私はやっぱり「直感」を大事にしてほしいと思っています。もしうちのお店に来てくださったなら、「自分で選ぶ感覚」を探ってほしいですね。「あ、これは……」とピンと来たものを手に取ってみると、何か感じるものがあるはず。それを実際に使っていくうち「自分が好きなもの」の感覚が、だんだんと分かってくるんです。
とはいえ、最初に買うなら手持ちの食器と合わせやすいシンプルなものがいいでしょうかね。洋服選びと同じ感覚でいいんじゃないかな、と私は思っていて。あらゆるものに合わせやすい存在といえば、白いシャツ。五十嵐元次さんのうつわはまさにそんな感じ。シンプルな白磁のうつわは様々な料理をきれいに、おいしそうに見せてくれます。食洗器やレンジにも対応可の使いやすさもいい。
「シンプル=使いやすい」というわけでもなく、寺門広気さんという作家さんのうつわは絵柄がユニークで楽しいのですが、意外といろんな料理に合わせやすいんです。うちに置いてあるうつわは基本的にどれも「日常での使いやすさ」を考えて選んでいます。ちなみに寺門さんはもともとモダンアートの作家さんで、「モダンアートを食卓に」という思いで制作されている方なんですよ。ユニークなうつわは「心躍らせるもの」として活躍してくれます。ファッションでいうとバッグや帽子、ストールみたいな存在でしょうか。たまに眺めるだけでも特別な気分になれるというか。
2024.05.21(火)
文=白央篤司
撮影=平松市聖