Aさんは私より五歳ほど年長で、とても気の合う友人であり、食堂の大変な時期を共に力を合わせて乗り切ってきた盟友でもあります。福祉や介護にも詳しくて、母に要介護認定を取るように勧めてくれたのも彼女でした。それまで私には自分の母親のことを役所に相談するという発想がなかったので、Aさんの助言でどれだけ助かったか分かりません。

 編集者と新作の打ち合わせをしているうちに猫の話になり、自然とAさんの助言を思い出して、作品に取り入れました。「新小岩のリル」は感謝を込めて、Aさんに捧げます。

 私の場合、偶然の成り行きでアイデアが浮かび、それが過去の実体験と結びついて作品として結実してゆくことがよくあります。だから「人生すべてネタ」と言っても過言ではありません。オレオレ詐欺に遭いそうになった経験も、DV猫に引っ掻かれて右手が腫れあがってしまった経験も、すべて作品の肥やしになりました。

 これからも過去に経験したこと、これから経験すること、すべてを重ね合わせて、新しくなろうとしている新小岩を舞台に、色褪せぬ人の情を書いてゆきたいと思います。

 皆さま、また冬の新作でお目にかかりましょう!


(「あとがき」より)

2023.06.26(月)