穏やかな空気の路地裏を歩く

ブルーとグレーの玄関に掲げられたグレーの三角形の表札。全体のカラーがコーディネートされている

 この表札、書かれている家の名前は、家主が自由に変えることができるのだという。なかには、「GOD BLESS OUR HOME(私たちの家に神のご加護を)」などという、文章が名前になっている家もある。レストランやショップなどの店舗となっている建物は、ドアのデザインも含めて、さらに印象的だ。島によっても特徴があり、マルタにある3つの主要な島のうちのひとつ、ゴゾ島ではグリーンのドアが多い。

 家々の表札を気にかけて歩いていると、表札だけでなく、ビッシリと文字が書かれた書類が貼ってある家も。これは許可証だ。歴史的な建物が多いマルタでは、文化遺産を守ろうという政策が取られている。50年以上前に建てられた建物を修復したり改築したりするときには、国の許可が必要なのだ。家主は、工事を始める前に玄関に許可証を貼る。許可なしに建物に手を加えると違法となってしまうからだ。

珍しいデザインの三角形の表札には「私たちの家に神のご加護を」と書かれていた。これも家の名前である

 また、建物が一戸独立型ではなくひと続きになっているマルタでは、度重なる改築で1階部分と2階部分の家主が違うこともあるという。スリーシティーズの町を案内してくださったマルタ在住のガイド、長谷川さんが以前住んでいた家は、2階部分が隣の家の上に載っている造りだったのだとか。古い町ならではのご近所付き合いがあるというわけだ。

 そんな話を伺いながら歩いていると、2階の窓に住人が現れた。思わず手を振ると、笑顔で手を振り返してくれた。マルタの人々はほんとうに穏やかな表情をしている。道を聞いても、犬の散歩中に話しかけてもいやな顔をする人はいなかった。町の穏やかな雰囲気は、訪れる人々を優しく迎えてくれるマルタの人々が醸しているのだということがよく分かる。

左:古い家を修復するための許可証。玄関脇に貼ってあった
右:日本語の話し声が珍しかったのか、家主が出窓に現れた

 島で暮らす猫たちの人なつこさは、優しい住民の皆さんにかわいがられている証し。猫たちに負けないくらいにかわいい表札をウォッチングすれば、きっと町歩きの楽しさも倍増するはず。

マルタ観光局
URL www.mtajapan.com

トルコ航空
URL www.turkishairlines.com

たかせ藍沙 (たかせ あいしゃ)
トラベル&スパジャーナリスト。渡航130回超・50カ国超、海外スパ取材200軒超、ダイビング歴800本超。日々楽しい旅の提案を発信中。著書は『美食と雑貨と美肌の王国 魅惑のモロッコ』(ダイヤモンド社)、楽園写真家三好和義氏と共著の『死ぬまでに絶対行きたい世界の楽園リゾート』(PHP研究所)など。最新刊は薔薇でキレイになるためのMOOK『LOVE! ROSE』(宝島社)。
Twitter twitter@aisha_t
ブログ ameblo.jp/aisha

Column

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2013.12.17(火)
text & photographs:Aisha Takase