小さいながら見ごたえたっぷりのミュージアム

トルコ史上最高価格を記録した、「亀の調教師」(1906年)

 イスタンブールには、必見観光スポットというのがいくつかある。トプカプ宮殿、アヤソフィア博物館、ブルーモスク…… その辺をひと通りおさえた後、また別の視点からイスタンブールを見たい、という人にはぜひ、ペラ美術館がおススメだ。

“ペラ・ミュゼシ(ペラ美術館)”は、なんと1893年に建てられた120年ものの歴史的建築物

 ペラ美術館は、タキシムのペラ地区にあるアールヌーボー建築をリノベーションして作られた、こぢんまりした美術館。全部見ても1~2時間ほどしかかからない。いちばんの見どころは、なんといっても常設展のフロアにあるオスマン・ハムディ・ベイの「亀の調教師(Kaplumbağ Terbiyecisia)」だろう。ペラ美術館がオークションでトルコ史上最高価格の約350万ドルで購入したことでその名を馳せ、現在ではその数倍の価値を持っているともいわれている。

 ノロノロとした動作の亀を辛抱強く調教しようとしている年老いた調教師は、オスマン・ハムディ・ベイその人だ。彼はフランスに留学して芸術を学び、イスタンブール考古学博物館を創立した人物。その生涯を芸術や博物館の重要性、自国の考古学遺跡を守る大切さを訴えることに捧げたが、ここでは彼のそんな人生が象徴されている。

「トルコ・ハレムからのワンシーン」(1654年)。当時のハレムの様子などがうかがえる

 常設展には彼のほか、オスマントルコ帝国末期に近代化を推し進める政府によって招待され、イスタンブールに滞在していたヨーロッパ人画家たちが描いた当時のトルコ情景が並ぶ。オリエンタリズム潮流の中、ハレムはとりわけ彼らの興味を引いたようで、閉鎖された空間でも生き生きと楽しんでいるハレムの女性たちの絵が多く描かれている。

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text&photographs:Aki Yasuo