世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。
第12回は、たかせ藍沙さんが地中海に浮かぶマルタ共和国で感心した、住民たちの美意識について。
地中海の小さな国の名物は猫だけじゃない!
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地中海のイタリア沖に浮かぶマルタ共和国は、マルタ島を主島とする国土の総面積が淡路島の半分ほどという小さな島国。16~18世紀にかけて聖ヨハネ騎士団(通称マルタ騎士団)が本拠地としていたことでも知られている。旅立ち前には、猫の写真集でマルタを知ったという話も何度か耳にした。
マルタ島の東部にあるスリーシティーズはヴィットリオーザ、コスピークワ、セングレアという3つの市の総称で、首都のヴァレッタとは入り江を隔てた場所にある。入り組んだ海岸線が自然の港となっているため、聖ヨハネ騎士団が最初に要塞、堡塁、宮殿、教会などを造ったエリアだ。
ヴァレッタの町よりも古い家並みが残るこのスリーシティーズは、碁盤の目のように整備されているヴァレッタと比べると迷ってしまいそうな細い路地が多い。なかでも、ヴィットリオーザ市の車が通ることもできない路地裏では、建物の外壁周りや窓などにたくさんのグリーンが置かれていたりして、住民の美意識が美しい景観に一役買っている。
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右:シャコ貝の形をしたプレートにマルタ島の教会にあるマリア像が描かれている表札
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右:「涙を流して嘆くマドンナ」と書き添えられたマリア像の表札
そんな小径を歩いていて目につくのは、家々の玄関脇にあるかわいい装飾、表札だ。実に個性豊かに趣向が凝らされている。表札の上の数字は家の番号で、番地のようなもの。その下にあるのは家の名前だ。絵や彫刻などで飾られていたりするこの表札、マルタで信仰されている聖母マリアなど宗教的なものも多いが、ドアの色と合わせてあったり、現代的なものもあってオリジナリティに溢れている。ドアに取り付けられているノッカーも個性豊かで、これらと合わせてウォッチングするのもまた楽しい。
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右:このドアにあしらわれたノッカーは、マルタクロス(マルタの十字架)とタツノオトシゴになっている
2013.12.17(火)
text & photographs:Aisha Takase