世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第13回は、小野アムスデン道子さんが米国ユタ州の大地で目にした、世にも美しい風景の数々について。

モルモン教本部を包む、さすがのクリスマスの灯り

 冬の澄んだ空気に輝く満天の星。アメリカの国立公園の中では、一番暗い夜空を持つというユタ州のブライスキャニオンを目指して、まずはソルトレイクシティへ。

 ここはユタ州の州都で、末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)の本部であるテンプルスクエアがある。さすがモルモン教の総本山、クリスマスには何千というライトが飾られて、まるで光の木が生えているかのよう。そのなかに6本の尖塔がそそり立つテンプルは、荘厳な感じ。飾り物のクリスマスイルミネーションという概念を超えて、テンプルスクエア全体が光に包まれている。

いったい何個のライトが付いているのか。光の紅葉を見ている感じ
まるでお城といった趣のテンプルだが、ここは神聖な場所。モルモン教徒であることはもちろん、中でもきちんと教義を守っている人しか入れないそう

 美しい星空を見るためには、空気がきれいなことに加えて、なるべく周りに町の光がないことが重要。ソルトレイクから車を走らせること約5時間、ブライスキャニオン国立公園に着く。隆起した台地が雨・風・氷などで何億年とかけて浸食された地形は、息を呑む迫力。そして夜ともなれば、半径50マイル(約80km)には町がないという、漆黒の夜空に星の絨毯。ここのレンジャー達は、自分達はこの美しい夜空を守ると言う意味合いでダークレンジャーと名乗っているという。どんな星空が見えるかと期待に胸を膨らませていたら、なんと夕方から雪!

ブライスキャニオンの大地は、浸食されてまるで赤い林のよう
全米一の暗い夜空での星は見逃したが、赤い大地はまるで砂糖菓子のようできれい

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2013.12.24(火)
text:Michiko Ono Amsden
photographs:Osamu Hoshino