家族の前では意識して明るく、ヘラヘラしている
──大志とゆいの相性のよさがわかるシーンが挟まれるからこそ、離婚に向かう展開が切なくもなる本作。きっかけは大志の不倫でしたが、彼らはどのタイミングで本気で離婚を決意したと思いますか？
仲 お互いが弁護士に相談するのは、絶対に勢いだったと思うんです。「あっちが行くならこっちも」みたいに。最初は強がっている部分があったんじゃないかな。でもゆいに関してはCMの違約金とか、現実的な問題が出てきた時に、自分の女優人生を考えて離婚を決心したと思います。
松坂 きっとこういうことって積み重ねかもしれないですね。部屋が汚いとか、言い方が気に食わないとか、そういう“ちりつも”がある状態で現実的な問題が起きた時に、「やっぱり離婚かな」と思うのかもしれません。
──育った環境も置かれた状況も違う他人が家族になる難しさを感じますよね。おふたりが普段、身近な人とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか？
松坂 溜めすぎないことかもしれません。例えば「きっと相手はこう思っているから言わないでおこう」とする気遣いって、自分が無理をすることでもあるじゃないですか。そうするといつか崩壊しちゃう瞬間があると思うんです。そうやって不満が溢れてしまった時に、相手のことをグサッと傷つけてしまったり、修正が効かなくなってしまう。だから抱え込みすぎず、言いたいことを溜め込まないことの大切さは、この作品を通して感じました。
仲 私の場合、自分自身が「あの人どう思ってるのかな」とすごく考えすぎちゃうタイプなので、相手にそう思わせないように「わ～！」っと明るくヘラヘラするようにしています。「仲さん、大丈夫かな……」みたいに気を使わせたくないんですよ。その場が円滑に進むなら、自分が無理をしたいです。これくらいの我慢はいつだってできますしね。
──家族に対しても同じですか？
仲 そうですね。ぼーっとしているだけで「なんでそんなに機嫌悪いの？」と言われちゃったら嫌じゃないですか。「何を食べたい？」と聞かれて「なんでもいいよ」と普通に言っても、「怒ってるの？」と言われちゃうから、「なんでもい～よ～♪」と嬉しそうにする（笑）。
松坂 同じ言葉なのに、テンションで全然ニュアンスが変わりますね。
仲 イヤイヤやっていないし、明るく機嫌よくいることのほうが楽しいんです。だから普段から「きゃ～！ やば～い！」みたいにテンションが高いんだと思います。
松坂 なるほど……帰ったら実践してみようと思います（笑）。
仲 あはは！
──自分の意図とは違うニュアンスで相手に受け取られてコミュニケーションに困ることは、きっと誰にでも経験がありますよね。
松坂 少し前ですけど、吉田鋼太郎さんに「お前、本当に俺の話聞いてんのか」って怒られたことはありました（笑）。もちろんちゃんと聞いていたんです。でも多分、相槌が多かったんだと思います。「はい、はい、そうですね、へー」っていう、「へー」がちょっと引っかかったのかもしれません。ニュアンスって大事ですよね。
仲 私の場合はちょっと意味が違うけど、「派手すぎ」と言われることは多いですね。明るい色の服が好きだから、息子の学校の行事のために濃紺の服を買いに行く時が、今世紀最大の闇（笑）。自分が好きな服を着たいと思っちゃいます。
2023.06.20(火)
文＝松山 梢
撮影＝佐藤 亘
スタイリスト＝猪塚慶太（松坂桃李）、番場直美（仲里依紗）
ヘアメイク＝Emiy（松坂桃李）、本岡明浩（仲里依紗）
