この記事の連載

1年間かけ山を縦走。四季折々に山で働く人がいた

――山に詳しい木材会社の方も、山で生きる方法はなかなかわからないものなのですね。

 そうなんです。会社員を辞めた後はまるまる1年間、北アルプス・南アルプス・中央アルプス・八ヶ岳を端から端まで歩いて、山にいる方々に話を聞いて歩きました。そうするうちに山で生きている人って、年中ずっと1つの職業に従事しているわけじゃないんだ、ということがわかってきて。たとえば、山岳パトロール隊も山にいるのは夏や秋の大型連休中だけで、残りの期間は他のことをしているんです。宿のオーナーだったり、スキーの選手だったり、農家さんだったり。結果、出会った人みんな、1年中山にいるわけじゃないっていうことがわかりました。

――大学の先生なら、自分の研究の時か学生の研究の時しか、山に行けないわけですもんね。

 はい。どの仕事もかっこいいなとは思うのですが、世の中に既にある職業だと、やりたいことをひたすらやりたい僕の性質には合わないかも、と思いました。ただ、四季を通じて山に居続けると、四季折々に山で働く人がいるなということに気がつきまして。それで、出会った仕事を組み合わせて、働き方をどうにか紡ぎ出していけば、一年中山にいられるんじゃないかと思ったんです。

2023.06.03(土)
文=CREA編集部
撮影=鈴木七絵