「登山はバドミントンと同じくらい夢中になれたもの」
そう語る元女子バドミントン日本代表の小椋久美子さんは、2021年の春に何気なく登った地元・三重県鈴鹿の山に魅せられ、山ライフをスタートさせた。多いときは月1~2回のペースで登り、ソロトレッキングも楽しんでいる。
趣味が仕事に繋がり、2021年にはテレビ番組で富山県の黒部川流域を歩き、第2弾となる「神々の庭へ 石狩川源流紀行 最初の一滴をもとめて」(2022年12月28日20:00~22:54 BSテレ東)で、北海道の大雪山へ。これまでさまざまな山と出合い心動かされてきた小椋さんから、自然と向き合う醍醐味を教えてもらった。
三重の鈴鹿の山にひとりで登り、登山の楽しさを知った
――登山はいつぐらいから始めたのですか?
最初のきっかけは、6年前に登った富士山でした。運良く、夕日や星空、ご来光を見ることができて、すばらしい景色に感動しました。ですが当時、純粋に山が好きというわけではなく、“富士山は登っておかないと後悔する山”という思いのほうが強かったですね。
それからフットサル仲間に誘われて、他の山に行ったりしましたが、みんなと一緒に登ることや達成感を分かち合えることが楽しいと思っていました。
――そのスタンスが変わったのは?
のめり込んだのは2021年の春ですね。コロナ禍で緊急事態宣言が出る直前に三重の実家に戻ったんです。名古屋の仕事が多かったので近いほうがいいと思って。三重には「鈴鹿セブンマウンテン」と呼ばれている7つの山があるエリアがあって、登ってみようかなと思ったんです。呼ばれている気がして(笑)。
――ひとりで、ですか?
そうです。初心者でも安心なルートはあったのですが、山を感じたくて健脚コースを選びました。最初は緊張しましたが、やってみるといけるんだなあと思って。
――富士山のときとは違って、自分のなかでスイッチが入ったんですね。
とくに感動したのは2回目です。入道ヶ岳に登ったんですが、下山のときに谷から見えるアセビの紅葉と奥に市街地が広がる風景がすばらしくて。場所によって山の景色が違って見え、山頂じゃなくても広がりがある眺めが楽しめるんです。
――ソロトレッキングではどのように過ごすのですか?
きれいな景色を動画に撮りながら、ゆっくりと自分と対話する時間を過ごします。普段意識していないことがふと浮かんできたりするんです。いつもは目の前の仕事で必死になっているので、心のなかで本当に思っていることを自覚できていないんでしょうね。
――ひとりだと準備もしっかりと?
はい。慎重なタイプなので事前にしっかり調べます。ひとりで登っている方のブログを見て危険な場所を事前にチェックします。万が一遭難したときに備えて行動食、飲み物、怪我をしたときに処置ができるセット、寒さ対策のアルミシート、ヘッドライト、クマ鈴も(笑)。すごく心配性なのでクマに遭ったらどうしよう、いざとなったら木に登る? とシミュレーションもしました。
行きたいルートは事前にGPS地図アプリに入れておいて、地上からの電波が入らない場所でも見られるようにしています。ルートが違っていると地図上の道から外れるので、すぐに気づくことができる。スケジュールもしっかり考えますね。日が落ちてからの下山が一番まずいので、下りる時間を逆算してスタート時間を決めます。
2022.12.18(日)
文=CREA編集部
写真=榎本麻美(Portlait)