歌舞伎発祥の地でインスタライブも
終演後にメンバーが日替わりでほぼ連日のようにインスタライブを行っているのです。つい先ほどまで舞台にいた俳優さんが、熱気冷めやらぬ表情でお互いの普段の関係性や人柄が垣間見えるトークを繰り広げ、視聴者の質問にも答えてくれているのです。いかにも今の時代らしいインタラクティブなことが、400年を超える歴史を持つ歌舞伎発祥の地に建つ、伝統ある南座の楽屋から発信されているのです。
ダブルキャストで同じ役を演じる者同士、相手役、共に切磋琢磨してきた同世代など組み合わせはさまざま。それぞれの視点を通して演目や役を見つめ直してみると、自分ひとりでは気づかなかったさまざまな発見に出会えることでしょう。配信時間は15分~20分ほどで忙しい人にも負担にならないボリューム感です。
舞台そのもののトータル上演時間は、30分休憩1回を含めて約3時間15分。『仮名手本忠臣蔵 五、六段目』の前には、右近さん(Aプロ)、壱太郎さん(Bプロ)による解説があります。
そして休憩を挟んで上演されるのが、AプロBプロ共通の新作歌舞伎舞踊『忠臣いろは絵姿』。壱太郎さん、右近さん、中村鷹之資さん、片岡千之助さん、中村莟玉さんという中心メンバー5人が登場して、『五、六段目』の後の物語を踊りによって華やかに見せてくれるのです。
趣向を凝らしたシチェーションが愉快で“人形振り”という日本舞踊独特の技法を観ることもでき、さらにエキサイティングな立廻りの場面も盛り込まれています。そこには「『忠臣蔵』そのものをご存じない、同世代の方にも歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』という作品全体を感じていただきたい」という、壱太郎さんの願いが込められています。
劇場内外にいくつかの撮影ポイントが設けられていたり、来場者全員に特製ステッカー(中身はシークレット)配布があったり、番附購入者に抽選でサイン色紙のプレゼントがあったり……。劇場を訪れてこそ得られるお楽しみが盛りだくさん。そして何より最大の幸せは舞台から放たれる生の感動そのものです。
『仮名手本忠臣蔵』はこの『五、六段目』以外にも単独で上演される作品がいくつかあり、また物語をほぼ一気に観ることができる反面、歌舞伎初心者にはちょっとハードルが高いであろう“通し上演”も時折あります。そうした機会に巡り合った時、今回の公演に触れておくと、馴染みやすいうえにより深く楽しめることは間違いありません。
三月花形歌舞伎
2023年3月4日(土)~26日(日) ※休演日 9日(木)、16日(木)
午前の部 午前11:00~
午後の部 午後15:30~
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/play/806
今こそ、歌舞伎にハマる!
2023.03.16(木)
文=清水まり
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