お店の人と話をすることがおもしろいんです

有次/「特別な一本を買いに錦へ」より

――器だけでなく、台所用品の要ともいえる包丁を新調され、名入れをしていただきましたね。

伊藤 錦の「有次」ですね。社長の寺久保進一朗さんは17歳でお店を継がれてこの道半世紀! 所作の美しい方です。庖丁を研ぐ姿なんか背筋が伸びてほれぼれしてしまいます。寺久保さんが言われたのですが、包丁を大事にする方は台所がきれい、台所がきれいな人は生き方そのものもきれいなはず。だから、「ちゃんとせなあかん」と。

――お手入れはどうされているのですか? 今は、砥石も持っていない人が多いですよね。

伊藤 私は砥石を使って自分で研いでいます。包丁は使ったらすぐ洗って拭くという習慣が身につきました。寺久保さんと話していると、感心することがたくさんあって、ただ店で買い物をするだけではなく生活の意識が変わってきました。お店の人と話をしているといろいろ影響を受けますね。

有次/「特別な一本を買いに錦へ」より

――買い物で人生に(!?)影響を受けることもあるのですね。

伊藤 汁物を食べさせてくれる「志る幸」のご主人も所作がとてもきれいでした。厨房も清潔ですし、凛とした空気を全体に感じます。これは老舗だけではなく、喫茶店などでも感じることです。京都ではきりっとした独特の空気を感じさせるお店が多いような気がします。それと「人」と話をしている感じがします。というのはコンビニなんかに行くと、私の娘に対しても私に対しても、同じような口調でやり取りしますよね。マニュアルがあるのでしょうけれど、機械と話しているような気になります。京都はまだ人と人とのつながりがあるようで、それでほっとします。
 個人経営の店がまだまだ残っていて、行けばこの人に会える、というのが大きいのかも知れません。今回、オオヤさんの案内で初めて伺ったのですが、原毛屋さん「SUPINNUTS」は織りやニットの作家さんの間では知らない人がいない店です。素材を見るのは好きですし、その成り立ちを知るのも好きで、話し込んでしまいました。

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2013.11.20(水)