アダムとエバの「原罪」は「自意識を持つこと」だった? なぜ神はアベルをえこひいきしたの?
誰もが知っている聖書のエピソードを、もっと深く掘り下げてみたら……。
共にキリスト教徒の中村うさぎさん、佐藤優さんのナビゲートで聖書の世界を旅してみませんか。
よく知られたエピソード満載
「創世記」を読む
中村 旧約聖書が成立したのは、いつごろなんですか?
佐藤 紀元九〇年ごろに律法書や預言書、諸書の三十九文書が編集され、確立されたとされているんです。「創世記」はこの中の律法書(トーラー)に含まれています。
中村 聖書では「創世記」のあとに「出エジプト記」が出てきますが、それっていつごろの話?
佐藤 モーセがヘブライ人を引き連れて出エジプトを行ったのは、紀元前一二八〇年ごろですね。
中村 日本じゃまだ縄文時代か。
佐藤 まだ日本はマシなほう。一千年前のロシア人なんて洞穴に住み熊のそばで暮らしていた……。
中村 嘘だよ、ぜったい嘘(笑)。
佐藤 創世記の最初、神は一日目に「光あれ。」と言われて光と闇を分け、二日目は大空を、三日目は陸と海を、人間が創造されるのは六日目。聖書にはこうあります。《神は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう……」》ここで神は「我々」と複数形を使っているんです。
中村 ほんとだ。気がつかなかった。すると、一神教じゃないのか。
佐藤 神が自分のことを一人称複数で「我々」と語る箇所は何カ所かあります。神学的に言うと、この場合は「熟慮の複数」の用法。
中村 それは、どういうこと?
佐藤 人間を造ろうとして、よくよく考えるわけです。こうしたものを造っていいのか、どのように造ればいいのかと。我々だって熟慮するときは、いろんな人の立場に立ってみて考えたりするでしょ。
聖書を読む
物質的には豊かでも、先の見えない時代だからこそ人は宗教に救いを求めます。二千年近く、人々に読みつがれてきた「聖書」。その奥深い世界を、もっと面白く読み解くための神学入門書となる一冊です。
中村うさぎ・佐藤優
定価1785円 文藝春秋刊
2013.09.29(日)