堺雅人さんの人気連載「月記」43カ月分が1冊の本に。そこで、連載中の思い出話や、本に込めた思いを聞いてみました。単行本未収録の特別インタビューです!
堺雅人が演じながらかんがえていたこと
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実は、食にまつわるエッセイ連載にしようという密かな目論見もあったんですよ。でもそれは、第1回の「あぶらあげ」と、第2回の「みそラーメン」(2009年10・11月号掲載)であっさりと潰えてしまいました(笑)。
担担麵がなぜこんなに流行り始めたのか気になり、担当編集さんにリサーチをしてもらったこともあるんですが、原稿用紙五枚も書けなかったんです、担担麵にそこまでの愛情が持てなくて……。
「食べる」ことは「すこやか」につながるわけですが、この頃、「アタマからカラダへ」というテーマがなんとなく自分の中にありました。そして同時に、それがいいことばかりではないという思いも。体に聞く、感覚に任せるというのは逆に言うと「思考停止」ですしね。
いずれにしても、それまでの自分は言葉重視の傾向にあったから、カラダに関係することについて言葉で考えてみよう、と。役がきっかけで禁煙していた時期にはじまった連載なので、そのことも影響していたかもしれないですね。
そういえば、タバコのことを2カ月連続で書いて、編集さんに「難しすぎる」とたしなめられたこともあったなぁ。世界史、文化史において、タバコを吸い出したときから芸術はどう変わったのか、という考察。後で荒俣宏さんにお話ししたら「すごく面白い」って言ってくださって、本にするとき、けっこう加筆しました。
仕事の副産物として生まれた本
実を言うと、原稿はすごく重荷で……。休みの間、いつも原稿どうしようって考えているから、休みがないんですよ! 空き時間があったら喫茶店に入って、道具を広げてぼけーっと考えていました。結果、書き記したものには「演じるときに何を考えていたのか」が詰まっているから、「自分の仕事の副産物」なんだと思っています。演じること、アクションは、言葉で考えるのと真逆の作業。だからこそ「言葉を捨てて演じる」ために、とことんまで言葉にこだわりたいんですね。僕にとっては、準備なのかもしれない。まず論理的に考え、やるときはそれを全部投げ捨てる。どっちが好きかって言われたらわからないけど……、書く作業も含めて「演じる」だと思うんです。
あと、毎月載せていたオフショットにも苦労がありました。けっこう考えて「絵作り」していたんですよ。本にも収録されているので、男のマネージャーと僕が悪戦苦闘している姿を想像して楽しんでもらえればと思います(笑)。
堺 雅人(さかい まさと)
1973年生まれ、宮崎県出身。早稲田大学在学中から劇団「東京オレンジ」で俳優活動を開始。以来、映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。7月から主演ドラマ『半沢直樹』(TBS系)がスタート。
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『文・堺雅人(2) すこやかな日々』
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2013.07.25(木)
CREA 2013年8月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。