1年を通しての取材、着物や浴衣で歩いたことも
――取材が1年以上にわたり、着物や浴衣で歩いたこともありますね。
伊藤 着物だと歩くのがゆっくりになるので景色がよく見えて、のんびりした気持ちになります。
――そういえば今回、織物の町、西陣に行かれています。
伊藤 着物の町というのはわかっていましたが、西陣織は私にとって遠い感じがしましたし、そこに何があるかわかりませんでした。唐紙のお店「かみ添」さんに何度か通ううちに周辺のおすすめを教えてもらったり、奥様が出してくれるお菓子がおいしくて、そのお店を紹介してもらったり。お菓子でまた範囲が広がったと思ったら、その唐紙屋さんの隣に私の知り合いが引っ越してきたんです。和菓子を作る女性二人が。西陣が点から線につながっていって、行くのが楽しくなってきました。
――五条も今回新たに取り上げた町です。
伊藤 五条は河井寛次郎記念館と、おはぎの今西軒くらいしか知らなかったのですが、伊賀の「ギャラリーやまほん」の京都店ができ、通い始めたことでそのお隣にある建築関係の本を中心に扱う大喜書店さんを知りました。大喜書店の店主の方から、またお勧めの場所を伺ったりして……そんな風に広がっていったんです。書店では祇園の「BOOKS & THINGS」という店にも取材に行きました。店主の方の家の本棚がそのままお店になったような古書店。骨董屋が立ち並ぶ、なわて通からさらに路地を少し入ったところにあるのですが、看板が小さくて、つい見落としてしまそうなくらいひっそりと店を構えています。古書店や骨董屋さんなどは、入るのに気後れしてしまう人もいるかもしれませんが、話してみるとみなさん優しいんです。本の中では、古伊万里の器を中心に扱っている「てっさい堂」さんにも行きました。かわいらしい豆皿が充実したお店なんですよ。
2013.11.20(水)