毎日イベント@ふらっとすぽっと
書店でのイベントというと、タレント著者のサイン会や握手会、絵本のよみきかせ会を思い浮かべる。キノミナさんでも、もちろんサイン会やよみきかせ会もあるのだが、本格的な劇場「サザンシアター」を使った講演会や、本を題材にした書評会ビブリオバトル(書評合戦)、店内コーヒーショップのスペースを利用した「ふらっとすぽっと」でのトークショウなど、多種多様なイベントが行われている。
イベント担当の書店員、神矢真由美さんは、「私が出勤の日は、ほとんど毎日、何かのイベントをやっているか、イベント受付初日でお問合せに対応しています」と笑顔だが、それだけ多くのオリジナルなイベントを企画し、準備し、運営するのは、実はかなりのエネルギーが必要だ。最近でこそ、一度イベントを一緒にやった出版社さんからの持ち込み企画が実現することも多いというが、新しいイベントを企画するためのアンテナを張る努力を惜しむことはない。出版社から届く新刊案内や新聞・雑誌の書評に気を配り、気になる著者や編集部には連絡を取ってみるのだという。
イベントのテーマもゲストも様々、小説家や翻訳家、文芸評論家、タレント、スポーツ選手から社会学者まで、硬軟とりまぜて多種多様、ここでしか聞けないトークもある。
もちろん、イベントへの参加条件を本の購入にしていたり、サイン本を並べたりすることで、直接の売り上げに結び付くことはあるだろう。ただ、それだけではない。神矢さんは、「ここに来ればいつも面白そうなことをやっている、とお客様に伝わるのが大事」という。
その思いを凝縮したのが“SUPERワクワク棚”。ここには、いつもワクワクがある。売れている本も書評本も、これがデビューの作家さんのサイン本も、気鋭の社会学者の本も並ぶ。入り口でワクワクに感化されて広いフロアに出ると、本棚の中に、こんな本もあんな本も……、いろんな本が目に飛び込んでくる。そして今週末も、キノミナさんのSUPERワクワク棚を通って、本の世界に旅に出るのだ。
【CREA WEB読者にオススメ】
神矢さんのオススメは、女性による女性のための文学賞「R-18文学賞」受賞作を含む山内マリコさんのデビュー短編集、『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎)。
『都市と消費とディズニーの夢』という著書もあるライターの速水健朗さんからお声がかかり、地方と中央というテーマで山内さんと速水さんのトークショウをふらっとすぽっとで開催した。自身も地方出身者で今は新宿で働く神矢さん、山内さんの描くヒロインの地方出身者が持つ「私だけは特別と思っていたのに……」という感覚に共感するという。
小寺 律 (こでら りつ)
本と本屋さんと、お茶とお菓子(時々手作り)を愛する東京在住の会社員。天気がいい週末には自転車で本屋さん巡りをするのが趣味といえば趣味。読書は雑読派、好きな作家は、小川洋子さん。
Column
週末の旅は本屋さん
新幹線や飛行機に乗らなくても、いとも簡単に未知のワンダーランドへと飛んでいける場所がある。それは書店。そこでは、素晴らしい知的興奮に満ちた体験があなたを待つ。さすらいの書店マニア・小寺律さんが、百花繚乱の個性を放つ注目の本屋さんへとナビゲートします!
2013.10.19(土)