本好きが思わずほっとする普段づかいの本屋さん

 西国分寺は、史跡の武蔵国分寺跡までほど近い、東京郊外の落ち着いた街だ。周辺は住宅街、駅前から団地が広がっている。ある秋の晴れた日、自転車で足を延ばし、国分寺周辺をポタリング(自転車で散歩)してみた。

 国分寺跡は、特に土産物屋も観光施設もあるわけでもないが、広々とした草地に往時をしのばせる礎石が残り、サンドイッチとお茶の入ったポットを用意して、レジャーシートを広げて文庫本片手に半日過ごすみたいな、大人な時間を楽しめる場所だ。草地に寝そべって天平時代を思うのも、緑の間をぬう細道を自転車で走るのもよい。国分寺跡を訪れた秋のお昼時、ネコが木陰でゆったりと寝そべっていた。

武蔵国分寺跡。礎石は金堂跡だろうか。礎石には巨大な柱が立ち、屋根には軒丸瓦が並ぶ光景を想像する

 BOOKS隆文堂は、西国分寺駅前のビルの2階にある街の本屋さん、いわゆる普通の本屋だ。おしゃれなステーショナリーをそろえたセレクトショップでも、ブック・コンシェルジュが選書したアートでビジュアルでハイソな本が並ぶわけでもない。が、「隆文堂さん大好き」というファンも多い。自分も、2年ほど前に訪れて以来ファンになり、「隆文堂さんが近くにあれば毎日でも通うのに」と思う。

 なぜだろう。落ち着くのだ。大きすぎないフロア、気取らない内装、さりげなく配された書店員さん手書きのオススメPOP、さほど広くないので品ぞろえは充実とは言えないが、ときどきハッとするような本がオススメされている。本屋好きの血が騒ぐ、というよりも、「落ち着くわー」という本屋さん。書店員、上田砂由里さんによると、昼間はお買い物にいらした主婦の方や、ビルに入る病院にいらした年配の方が多く、夕方は通勤通学帰りの方が多い、普段づかいの本屋さん。特別なお出かけではなく、日常の中に本がある空気が好ましいのかもしれない。

BOOKS隆文堂の入る駅前のビル、スーパーやクリニックも入る
西国分寺といえば、このキャラクター。ファンブック売れてます(国分寺の軒丸瓦がモチーフ)

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2013.11.02(土)