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「ハッとして! Good」はインスピレーションで浮かんだ

――「ハッとして! Good」というキャッチーな歌詞の発想は、どこからきたんですか?

 何も考えず「これでいいの?」と歌詞をつけて渡したら、本当に通ってしまいました。冗談のような話です。ちょうどその頃、日本語の歌詞に英語を積極的に入れる風潮が産まれていました。私はアメリカにいた経験があるので、「なるほど、英語を使う方法もあるのね」と思ったわけです。今はK-POPなどでも英語を入れるのが当たり前ですが、その初期ですね。

 私は作詞の勉強をしたこともないですし、頭で考えて作るよりも、インスピレーションみたいなものが大事だなと思ってます。ある意味で、書いたのは自分じゃないとも思うんです。

――以降、多くの曲で作詞も手がけていらっしゃいます。

 ディレクターの羽島さんと話をしていたら、そういう流れになっていっただけで、別に意図的なものではなかったんですよ。

――当時のキャニオンレコードは、中島みゆきさんをはじめシンガー・ソングライターを多く輩出していましたが、シンガー・ソングライターを目指していたわけではないのでしょうか?

 詞も曲も書けるので、「歌ったらどうか?」という話もいただきました。でも私は、歌が本当に下手なんです。聴いたら皆さん笑うと思います。自分でも分かっていますし、歌っても楽しくないですし。ずっとお断りしていたのですが、あまりにしつこく言われるので「じゃあ」ってデモテープを渡しました。それ以降、誰もその話はしなくなりました。論より証拠です(笑)。

――「宮下 智」というペンネームはどこから生まれたんでしょうか。

 周囲にあまり知られたくなかったので、盛岡夕美子という本名ではない新しい名前にしようと思いました。そこで、男性か女性かわからない名前でペンネームを考えてほしいと羽島さんにお願いしたんです。羽島さんは字画にも詳しかったので、「田原俊彦」という名前との相性も見てくださって、この名前になったそうです。

2022.10.16(日)
文=石津文子
撮影=深野未季