最新主演作は『さかなのこ』。自分は○○のこ?

――この世界に入ったきっかけで言うと、そのふたつも関係ありますか?

 いえ(笑)。最初は私、モデルをやりたかったんです。ティーン誌のモデルになって、事務所に入りました。そこから先輩方の演技レッスンを見学する日が何回かあって、それを見ながら「演技ってこんなに面白いのか!」と開眼したというか。自分が演技をやる人になるなんて思いもしなかったのに、それを見て面白いと思ってのめり込んでいきましたね。

――表現すること自体は好きだったけれど、それまでは、そういうほうには気持ちは行っていなかったんですね。

 そうですね。役者の仕事がどういうものかを、きちんとわかっていなかったというか。セリフがあって演じているのはわかっているんですけど、実際「何が面白いの?」みたいなのが、そんなにわかってなくて。それがレッスンを見たときにめちゃくちゃ面白かったので、やりたい気持ちが芽生えましたね。

――ちなみに、どうして最初はモデルをやりたいと思ったんですか?

 お洋服を着るのが好きだったんです。お母さんがかわいい洋服を見つけて着せるのが好きで、それで着るのが好きになりました。だから、モデルになったらいろいろな洋服をいっぱい着れるぞ、みたいな。子供の頃から鏡の前でポーズを取るのも好きだったらしくて。お恥ずかしい話なんですけど、ずーっと鏡にはりついている子だったそうなんです(笑)。だから、モデルになりたいと思っていました。

――『さかなのこ』のプレスでは、「ミー坊はさかなのこで、監督はえいがのこ」とのんさんは表現されていました。今ご自身を表現するなら「何のこ」ですか?

 「えんぎのこ」ですかね。

――即答でした。CREA 2022年春号『あたらしい暮らし 楽しい暮らし』に出ていただいたときに、「お芝居で魅せられるという過剰な自信がある」というお話もありましたが、「えんぎのこ」と答えたのも、それに通ずるところがあるからですか?

 何の実績もないときから、役も台詞も何ももらえていない段階から「自分は魅力的な演技ができる」と思っていたんです。それはレッスンを受けていて、演技するのが気持ちよかったから、「自分は役者になれるんだ」と信じ抜いていて。そのときからの根拠のない自信なんですよね。

 自分が演技が好きだという気持ちを信じ切っているから、もっとうまくなれる、もっと魅力的になれると躊躇なく思えていて。その考え方が、今もずっと続いている感じがします。演技に対しては、もう手放しで自信を持てるんですよね。

2022.09.01(木)
文=赤山恭子
撮影=深野未季