【温泉賢者が語る】ぬる湯のすすめ 温泉に入れば入るほど魅力がわかる 全国のおススメぬる湯も紹介！

生まれたばかりの温泉を堪能

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井出　自分は、源泉かけ流しの温泉しか入らないと決めているのですが、なかでも足元湧出温泉(温泉が自然の力で湧き出し、その場所で入浴できる)が最高！　全国でも数が少ない稀少な温泉で、ぬる湯も多いです。

山崎　実は私、手術をした後に傷を治しに「古湯坊 源泉舘」で5泊の湯治したんです。傷を治さなきゃと必死で1回1時間半～2時間、日に5回以上じっくりぬる湯に浸かっていたのですが2、3日目ぐらいに“解脱”を初めて体験して……。ここで一度解脱をしたら、その後はほかの温泉でも、泉質などの条件が揃えば1時間以内で解脱するようになりましたね。

井出　おお、素晴らしい。

山崎　霊泉と呼ばれる38度のぬる湯が足下から湧き出る「日本三秘湯 谷地温泉」や前出の「壁湯温泉 旅館 福元屋」も大好きです。

　メジャーどころですが、ぬる湯で欠かせないのが「法師温泉 長寿館」です。化粧水のようなお湯に、文化財の建物の浴場。ほの明るくて、寝るには最高の光量。そして、あちこちからぷつ、ぷつ、と湯が湧く音が聞こえてくる気がする。

井出　法師温泉は忌野清志郎さんのお気に入りの宿で、フジロックの帰りに必ず泊まっていたそうですよ。

山崎　驚きです！

井出　最高級のアーティストはこういう宿に泊まるんですよ。法師温泉は温泉の横綱ですよね。いやしかし、ぬる湯はホント寝られますよね。寝る気満々で、湯舟のへりや頭をのせる岩などを探しちゃいますから。

山崎　裸で知らない人がいるなかで寝られるって、よく考えるとすごいことじゃないですか？　それは解脱されているということですよ(笑)。

井出　ぬる湯にじっくり浸かっているといいアイディアも生まれるし、反対に完全無我になって浮遊感を楽しめることもある。外気温との差が少ない夏こそ、ぬる湯に長くいられ、没頭できる、最高の季節です。

山崎　冷房との温度差などで、実は冬より夏の方が体は冷えるもの。だから夏こそぬる湯に長く浸かり、しっかり温まるのが理にかなっているんです。やっぱり、夏が旬ですね。

――予想以上に体が温まるだけではなく、瞑想、没頭、大地と溶け合うような陶酔と喜び。ぬる湯を堪能すれば、新しい世界の扉が開けそう！

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※宿泊料金、料理などは、季節により変更になる場合があります。
※データは2022年5月24日現在のものです。
※1室1名利用時の1名最低料金、1室2名利用時の1名最低料金はいずれも1泊2食付き(税・サービス料込み価格、入湯税は別)を基本とします。

2022.06.27(月)
Text＝Kaori Minetsuki

CREA 2022年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。