【温泉賢者が語る】ぬる湯のすすめ 温泉に入れば入るほど魅力がわかる 全国のおススメぬる湯も紹介！

ぬるいからといってナメないで

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山崎　同じぬる湯でも、肌あたりが面白い泉質だなと思うのは炭酸泉、ラジウム泉ですね。要は熱に弱い泉質だから、源泉がぬるくても加温せずそのまま出しているというパターンが多い。もちろん白骨温泉「泡の湯旅館」や、「霧島湯之谷山荘」など硫黄系のぬる湯などの例外もありますが、炭酸泉がぬる湯の代表格になるんじゃないかな。炭酸泉のぬる湯に長く入っていると肌に小さな泡がびっしり付いて光が当たると全身がシルバーに輝く。泡が付くのはなんとも言えない快感だし、気づくと体はぽっかぽか。

井出　ぬる湯に入っているときはちょっと寒いくらいでも、湯上がりはすごく温まりますよね。

山崎　ぽかぽかになりすぎて、夜、火照ったこともあるくらい。そのときは「せせらぎ荘」に立ち寄り湯してから「玉梨温泉 恵比寿屋」に泊まったのですが、冬の2月の奥会津でダウンジャケットを着るぐらい寒かったのに、夜は少し窓を開けたほど暑く感じました。

井出　ぬる湯ってけっこうきますよね。僕は湯あたりすることがあります。

山崎　ぬる湯だからといってナメちゃいけない(笑)。炭酸ガスがたっぷり含まれた炭酸泉は本当に湯力が強い！

炭酸泉の泡にも個性がある

井出　福島県の「横向温泉」に2時間ぐらい入ったときは、ふわふわになって、その後部屋で6時間ぶっとおしで寝ちゃった。ぬる湯で長湯するうちに毛穴から全身に炭酸ガスが入ってくる。むしろ熱い湯よりくるものがあります。温泉は自分の体調やコンディション次第で感じ方が違いますよね。疲れていると湯あたりが強く出たり、デトックスされてスッキリしたり。

山崎　体が暑く感じる、湯あたりするときなどは疲れがどっときて、でも深い眠りに落ちる。湯あたりこそパワーになると感じることも多いから、体調に合わせて泉質を選ぶのもいいかも。私のぬる湯炭酸泉のベスト3は「長湯温泉 ラムネ温泉館」「玉梨温泉 恵比寿屋」、七里田温泉かな。

井出　七里田温泉の炭酸泉は最強！　シャンパンみたいにシュワーッて音を立てて湧いてくる。でも残念ながら、地震で湧出量が激減し、休業中。きっと復活すると思うので、ぜひ体験してほしい。(※対談後に復活しました！)

山崎　泡の出方も温泉によって様々。人工炭酸泉の画一的な泡と違って天然温泉は泡が生き生きしていて。人間の顔が違うように個性がある気がします。温泉は地殻変動だけではなく、季節や時間によって温度や匂いが変わることが多い。日によって温度が変わるのも、生きている天然温泉ならでは。

井出　そう、温泉はライブ。行ったときにしか体験できないことがある。

山崎　私も温泉は一期一会と思っています。人工温泉にはない天然温泉のファジーさ、ゆるさを楽しんでほしい。

2022.06.27(月)
Text＝Kaori Minetsuki

CREA 2022年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。