お弁当男子にキュン
益田ミリ
1969年、大阪府生まれ。イラストレーター。『ふつうな私のゆるゆる作家生活』『OLはえらい』(文藝春秋)、『ちょっとそこまでひとり旅だれかと旅』(幻冬舎)、『五年前の忘れ物』(講談社)など著書多数。絵本『はやくはやくっていわないで』(ミシマ社)で産経児童出版文化賞を受賞。漫画『すーちゃん』シリーズ(幻冬舎)が2013年春に映画化された。
お弁当を作る男子が人気なのだとか。書店には、男性用のレシピ本なども並んでいてオシャレなことになっている。
いいことである。塩分を控えめにして、野菜たっぷりのバランスのいい食事。ひとり暮らしの息子を案ずるご両親ならば、さぞや安心なことだろう。
しかしである。わたし個人としては、出来合いのお弁当を買っている男性を見るのが好きなのだった。夜のスーパーで、どれにしようかなぁ、という顔でお弁当コーナーをうろうろしている姿を見かけると、背後から何弁にするのか確認したくなってしまう。カツ丼に、サラダなんかを合わせて買っていたりすると、
キャッ、栄養のこと考えてるぅ!
かわいくなっちゃう。
あと、コンビニでお弁当を買い、レジで温めてもらっている最中というのも、なかなか哀愁があってよい。待たされているあいだ、次の客の邪魔にならないところに立ち、特にすることもないからレジ横のチロルチョコの箱なんかをじーっと見ていたりする彼らの横顔は、どことなく学校の先生に叱られた子どもみたい。
そして、温めてもらったお弁当をレジ袋に入れてもらい出て行くときは、大人の顔にもどっている。
お弁当がななめにならないよう、気をつけながら横断歩道を渡っているうしろ姿にキュンとしている女たちがいることを、彼らはきっと知らないはずである。
2013.09.15(日)
text & illustration:Miri Masuda