Y2KリバイバルはDIVA復興の兆し?
ーー3月末には1stアルバム『DIVA YOU』をリリースされました。どのようなコンセプトで制作されたのでしょうか。
アルバムのコンセプトは、「ワンルーム・ディーバ」。頑張りたいと思ってる人が、朝と昼と夜に聴くアルバムを目指しました。いやそれずっとじゃん! という話なんですが、具体的に、朝起きた時や通勤電車、疲れた昼休みや夜の帰り道にこれを聴くことで、「私の人生は私のもの」だと思ってもらえるようなアルバムを目指しました。それぞれのタイミングで聴こえ方が変わるような、さまざまなシーンに合わせた寄り添い方ができるアルバムにしたかったんです。
現実の生活は平凡な繰り返し。だから歌詞では、みんなも共感できるような些細な日々のぼやきのようなことをずっと書いています。でも、それがサウンドと合致した瞬間に、今いる場所がキラキラ・ギラギラしたステージのように見えてくる。そういう風に、聴く人の日常の時間がちょっと面白く、楽しいものに感じてもらえるといいなと思ったんです。
自分がどういう時に音楽を聴いて、どういう時に音楽に救われてるかと考えたら、「移動中」だったんですよね。良いオーディオで家で聴くというよりも、遅刻しかけてる時の道中で聴いている。満員電車の中で、「今日授業で発表あるから頑張ろう」って思いながら聴いていたり、怒られに行くと確定しながら聴いていたりとか。そういう時は、音楽があって良かったと思います。だから移動中にイヤホンを忘れたことに気づく瞬間は一番つらい。
ーー2000年代を彷彿とさせるダンスチューン満載のアルバム楽曲に胸が躍りました。暗くなりがちな社会に眩しい光を与えてくれる「Y2K」のトレンド潮流ともベストマッチしていると感じます。
私が好きすぎるテイストのサウンドで作ってもらった結果、たまたま全曲Y2Kリバイバルといえるような結果になったんです。たとえば音楽で今再び注目されているのは、ブリトニー・スピアーズさんや、アヴリル・ラヴィーンさんなどですが、私が当時聴いていたのは浜崎あゆみさんなどJ-POP。日本の歌姫たちのパワーが体に染み込んでいるんです。
だからトレンドを体現したわけではなく、私の好きを体現したら2000年代のJ-POPに仕上がったといったほうがしっくりきます。それに「やり過ぎくらいが良い」という過剰なことへの賛美があった2000年代は、そもそもDIVAとの相性がいいんですよね。
ーーたしかに、2000年代はDIVAたちの勢いがありましたよね。そしてエネルギッシュでポジティブなパワーがあふれていたように思います。
今は本当に弱っていたり、病んでいる方が多い。それでも自分を励ます方法はたくさんあると思うし、そういうコンテンツも溢れてると思います。でもそれは、平凡さで平凡さを肯定していたり、つまらなさをつまらなさで肯定したりしてるものも多い。それって「優しくてつまらない人ばかりが出てくる面白いドラマ」みたいなことなんですけど、それに満足できない人というのもいると思うんです。
心にギラギラしたDIVAを住まわせている人は、それでは物足りない。もっと面白さを求めているはず。私はそういう人に届いて欲しいと思いながら音楽活動をしています。
Y2Kリバイバルは、Z世代たちがまばゆかった時代へ救いを求めているようなところもあると思います。でもそれはあくまで同時代性へのエクスキューズであって、私はどの時代に生まれていてもDIVAが好きだったと思います。今でも懐メロという感覚ではなくずっと2000年代のDIVAを聴いていて、影響を受け続けているので、私がつくる曲は必然的にあの時代のテイストになってしまう。
最近は「自然体」のアーティストが多いですが、Y2Kリバイバル今だからこそ、DIVAの真価が問われていると思います。私は孤高の花であり圧倒的スター性を持ったDIVAがずっと大好きです。
2022.05.17(火)
文=綿貫大介
写真=平松市聖