ジェンダーを規定しない歌詞を書いていきたい

ーーアルバム収録曲の「DIVA ME」「好きかも思念体」「DANCESELF」……これらすべてタイトルは造語ですよね。ほかにもゆっきゅんさんの楽曲にはクセになるフレーズがたくさん出てきて、自覚的にJ-POPを楽しんでるように感じられます。

 造語をタイトルにしようと意識したわけではなく、たまたまなんです。フィットする言葉が現存しなかったので、私がつくるしかなかっただけで。「DIVA ME」を書いた時、歌詞というものが自分の思考を表現する媒体としてとてもしっくりきたんです。私は歌詞で自分を表現すべきだと気づけたのは大きかったですね。歌詞というものは、そもそも大好きでした。

 大袈裟に言うと、私は今まで曲を聞く時に「この歌詞最高!」「この歌声最高!」ということにしか意識がなかったんです。だから自分で歌詞を書くことなってはじめて、歌詞は単独では成立せず、メロディに左右されること、メロディが要請してくる言葉があるということを知りました。作詞の際は好きな言葉は使いすぎてしまうため、「既出ワード大全」をつくってその言葉を使わないようにもしました。

ーー「DIVA ME」という言葉を聴いた時、名詞であるDIVAを動詞として使ったのは発明だと思いました。さらに昨年はでんぱ組.incに歌詞提供をされていましたよね。

 もふくちゃん(福嶋麻衣子さん。でんぱ組.incなどをプロデュースしている音楽プロデューサー)に鬼の速さで「DIVA ME」のMVを観てくださいと連絡したら、「もちろん見ました。作詞の才能がすごいので今度何かお願いさせてください」って返信がきて。1ヶ月後くらいにお茶しましょうという流れになり、でんぱ組.incの作詞を頼まれました。連絡って大事ですよね。ありがたいです。これからもいろんな人に歌詞を書いてみたいです。

ーー作詞をする際に意識していることはありますか?

 作詞に関しては、使いたい言葉やエピソードなどをノートに手書きでまとめ、そのあとにスマホやパソコンで手直ししてつくっています。気をつけてることはたくさんありますが、たとえばジェンダーを規定しない歌詞であること。だから男とか女とか、彼氏とか彼女とかは歌詞に出てきません。なるべく描かれる関係性がオルタナティブなものに聞こえることができるように意識しています。ただ、一人称は自由に使ってます。それは自分の中で流動的なものだから。

ーー高校時代にフェミニズムの本に出会って救われたというお話を以前していましたね。その影響もあるのでしょうか。

 上野千鶴子さんや加藤秀一さんの本を読んだら、今まで自分が抱えていたぼんやりとした違和感がはっきり言葉にされていました。そしてこの違和感は自分以外の人にとっても重大な問題であり、学問にもなっていることなのだと知って救われました。だからこそ、自分が表現者としてやっていくからには、そこを無視するわけにはいかないと思っています。たとえば「好きかも思念体」という曲は女の子と女の子の話のつもりで書いているんです。どう聴いてもらってもいいようにファジーにしているのですが、改めてぜひ聴いてみてほしいです。

ーーいろんな聴き方ができるように設計されているのは、ゆっきゅんさんがフェミニズムを学んで得た知識も生かされているんですね。そしてその生き方や立ち居振る舞いを目の当たりにすることで、奮い立たされるファンも多くいると思います。もうすぐデビュー1周年を記念した1stワンマンLIVEということですが、これからの活動の展開についても伺いたいです。

 とりあえずワンマンLIVEを派手に成功させたいです。そして今後についてやることが確定しているのは、「1stアルバムで乗ってる人だけがつくれる2ndアルバム」の制作。今はとりあえず歌いたい歌をつくっていくのみです。2000年代J-POPへのリスペクトは体が捧げてることなのでこれからも続けると思うのですが、今は2000年代J-R&Bへのリスペクトも高まってる時期なのでどういう曲ができるか楽しみです。

ーーどんなテイストに仕上がるのか楽しみです。ゆっきゅんさんをみているといつも「面白いかどうか」という価値基準があるように感じます。今後も面白みにあふれた活動に期待しています。

 そうですね、自分が面白いと思うかどうかは1番大きいと思います。美しさとかよりも。やっぱり友達と喋ってる時って楽しいじゃないですか。その人を笑わせたいって思うじゃないですか。それをずっとしていたいのだと思います。

 これからも自分のままで個人として生きようとしている人たちを、楽しく美しく面白く肯定していきたいと思っています。さぁ、自己実現の全国大会が始まります。

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ゆっきゅん

1995年、岡山県生まれ。映画をモチーフにしたアイドルユニット「電影と少年CQ」のメンバーとして活動。2021年にセルププロデュースによる「DIVA Project」を始動させ、2022年3月には1stアルバム『DIVA YOU』を発売。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻を修了し、映画やJ-POP DIVAについての執筆やトークも行う。

「DIVA YOU」

https://diva-you.net/

1stワンマンLIVE
「自由が始まる DIVA your Stage」

2022年5月26日(木)
配信チケット 2,000円
https://twitcasting.tv/c:flowentertainment/shopcart/154829

2022.05.17(火)
文=綿貫大介
写真=平松市聖